9. 神経疾患患者の横隔膜機能の検討
神経疾患においては, 肺機能よりも呼吸筋障害による呼吸機能障害が多くみられ, リハビリテーションを実施する場合, その呼吸機能を把握することは重要である. そこで我々は, 運動ニューロン疾患(MND)15例, 末梢神経障害を有する糖尿病(DM)21例, 重症筋無力症(MG)12例, 健康成人71例を対象として, 安静時呼吸機能に最も影響する横隔膜機能を横隔膜誘発電位を解析することにより検討した. MND, DMでは, 従来の肺機能検査で異常の認められない時期においても既に横隔膜伝導時間の有意な延長と振幅の低下傾向を認め, 比較的早期よりMNDにおいては神経並びに筋を含めた横隔膜機能低下が, D...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 25; no. 5; p. 358 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.09.1988
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Summary: | 神経疾患においては, 肺機能よりも呼吸筋障害による呼吸機能障害が多くみられ, リハビリテーションを実施する場合, その呼吸機能を把握することは重要である. そこで我々は, 運動ニューロン疾患(MND)15例, 末梢神経障害を有する糖尿病(DM)21例, 重症筋無力症(MG)12例, 健康成人71例を対象として, 安静時呼吸機能に最も影響する横隔膜機能を横隔膜誘発電位を解析することにより検討した. MND, DMでは, 従来の肺機能検査で異常の認められない時期においても既に横隔膜伝導時間の有意な延長と振幅の低下傾向を認め, 比較的早期よりMNDにおいては神経並びに筋を含めた横隔膜機能低下が, DMにおいては末梢神経障害によると考えられる横隔膜機能低下が認められた. また連続刺激法(0.5, 1, 3, 5Hz各16回)による横隔膜誘発電位の解析では, 正常者, MGは刺激周波数が高頻度となるほど平均振幅が増大するのに対して, MNDでは正常者に比べ平均振幅の増加率は有意に低く, 横隔膜の収縮力低下が示唆された. 更に平均振幅が低下したMND4例のうち3例に%VCの低下が認められ, 平均振幅の低下は呼吸機能障害をある程度反映していると考えられた. 横隔膜誘発電位は比較的早期の横隔膜機能低下を検出でき, それに伴う呼吸機能障害を把握することも可能であり, 神経疾患患者における横隔膜機能の評価や呼吸機能管理に有用な検査と考えられた. 質問 札幌医大 兼重裕:MNDでは四肢のNCVの検討ではほぼ正常値を示すが, 今回横隔膜神経で伝導時間の延長をみたのは何故か. 答 紙本薫:MND群において正中運動神経速度が正常群に比べ延長していないのにかかわらず, 横隔膜伝導時間が延長していることについては, 横隔膜伝導時間が横隔神経伝導時間, 神経筋接合部伝導時間および筋内伝導時間の総和と考えられ, 横隔神経伝導時間の延長よりもむしろMND群においては筋内伝導時間の延長により横隔膜伝導時間の延長がみられるものと考えられる. |
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ISSN: | 0034-351X |