ヒト免疫不全ウイルスHIV(human immunodeficiency virus)
HIV感染においては, 感染後症状の有無にかかわらずウイルスは常に血液中に存在し続ける. このため, 輸血によるHIV感染を防ぐためには, 血液のHIVスクリーニング検査が極めて重要となる. B. HIVの性状: HIVはレトロウイルス科に属し, 直径およそ100nmのエンベロープをもつ球状ウイルスで, コア内にはRNA遺伝子と逆転写酵素を有する. 感染は感染者の血液又は精液や膣液中のウイルスまたはHIV感染リンパ球が性行為, 注射, 輸血等により他の人に入ることによりおきる. HIV感染後の血中ウイルスマーカーの経時変化を表1に示した. 感染数週後には血液中にウイルスRNAが検出され, その...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 4; pp. 594 - 597 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.08.1997
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Subjects | |
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ISSN | 0546-1448 |
Cover
Summary: | HIV感染においては, 感染後症状の有無にかかわらずウイルスは常に血液中に存在し続ける. このため, 輸血によるHIV感染を防ぐためには, 血液のHIVスクリーニング検査が極めて重要となる. B. HIVの性状: HIVはレトロウイルス科に属し, 直径およそ100nmのエンベロープをもつ球状ウイルスで, コア内にはRNA遺伝子と逆転写酵素を有する. 感染は感染者の血液又は精液や膣液中のウイルスまたはHIV感染リンパ球が性行為, 注射, 輸血等により他の人に入ることによりおきる. HIV感染後の血中ウイルスマーカーの経時変化を表1に示した. 感染数週後には血液中にウイルスRNAが検出され, その1~2週後には抗体が検出される. 抗体出現後血中ウイルス量は減少し通常検出限界のぎりぎりの量となるが完全には排除されずウイルスキャリヤとなる. エンベロープにたいする抗体(エンブ抗体)は, 以後常に高力価で持続する. コアタンパクに対する抗体(コア抗体)は無症候期には高力価で持続するが, エイズ発症期には抗体量が減少し, コア抗原陽性へと変わる. 現在日本では, 輸血用血液のスクリーニングはこれら抗体検出により行っており, 抗体検査導入後日本では輸血によるHIV感染の報告例はない(最近輸血後HIV感染の疑いのある例が1例見いだされ検討されている). ただし今後HIV感染がさらに蔓延して行った場合, 抗体出現前(ウインドウ期)の献血者血液による感染の危険性がより増加する. このため知識の普及, 献血時の問診の強化等により, ウインドウ期の血液が輸血に使われないようさらに努力していく必要がある. |
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ISSN: | 0546-1448 |