12. 体幹回旋運動の加齢変化―正常および片麻痺について

これまでにセルスポットシステムを用いて体幹自動回旋運動の測定方法を開発し, その有用性を報告した. 今回は健常老年者における体幹回旋運動の加齢変化を脳卒中後片麻痺例の麻痺による影響について検討した. 前回の報告と同様, 体幹に簡単な補助装置を取り付け, セルスポットシステムを用いて二次元計測を行ない, 体幹の自動回旋角度を算出した. 測定動作は体幹を垂直に保ち, 自動回旋を左右方向に最大限までそれぞれ5回行ない, その最大値を最大可動域とした. 対象は健常老年男子19名(62~85歳), および独歩可能な脳卒中後片麻痺患者18名(60~78歳, 右片麻痺10名, 左片麻痺8名)である. 健常老...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 20; no. 5; p. 329
Main Authors 伊東 元, 岩崎富子, 橋詰 謙, 斎藤 宏, 渡辺俊允, 木村博光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1983
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
Online AccessGet full text
ISSN0034-351X

Cover

More Information
Summary:これまでにセルスポットシステムを用いて体幹自動回旋運動の測定方法を開発し, その有用性を報告した. 今回は健常老年者における体幹回旋運動の加齢変化を脳卒中後片麻痺例の麻痺による影響について検討した. 前回の報告と同様, 体幹に簡単な補助装置を取り付け, セルスポットシステムを用いて二次元計測を行ない, 体幹の自動回旋角度を算出した. 測定動作は体幹を垂直に保ち, 自動回旋を左右方向に最大限までそれぞれ5回行ない, その最大値を最大可動域とした. 対象は健常老年男子19名(62~85歳), および独歩可能な脳卒中後片麻痺患者18名(60~78歳, 右片麻痺10名, 左片麻痺8名)である. 健常老年群の体幹自動回旋角度は頸部.胸腰部: 184±19度, 各分節では頸部: 120±13度, 胸腰部: 69±12度であった. これは若年者群における平均値の頸.胸腰部で72%, 頸部で82%, 胸腰部で59%に相当し, 加齢による影響は胸腰部で著明であった. 脳卒中片麻痺例では麻痺側.非麻痺側ともに可動域の減少がみられ, 加齢および疾患の影響が加わったものと考えられる. また麻痺側は非麻痺側に比べ可動域が減少し, この傾向は頸部において著しいが胸腰部では差が認められない. 以上のことから, 脳卒中片麻痺の運動機能評価や運動療法等においては, 体幹回旋運動に対して加齢による影響を考慮し, 麻痺側のみならず非麻痺側への回旋運動にも注意を払う必要性があることが示唆された.
ISSN:0034-351X