通所リハビリテーション利用者の基本動作レベル向上に関わる要因について

【はじめに】通所リハビリテーション(以下通所リハ)利用者は, 急性期, 回復期を経て, 維持期のリハビリテーション(以下リハ)にさしかかっている者が多く, 通所リハでの目的が機能, 能力維持である場合が多い. しかし, 実際には基本動作レベルでの向上, もしくは低下がみられる利用者も多く存在する. そこで, 今回, 当院通所リハ利用者における基本動作レベルの変化をもとに, 基本動作レベルの変化に関わる要因について検討したので報告する. 【対象と方法】当院通所リハ利用を平成12年4月1日より開始した全利用者のうち, 1年間継続して調査可能であった59名(男性31名, 女性28名, 平均年齢72....

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 83
Main Authors 木村佳代, 金澤寿久, 与儀哲弘, 貞松徹, 玉盛令子, 今村義典, 末永英文, 嶋田智明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】通所リハビリテーション(以下通所リハ)利用者は, 急性期, 回復期を経て, 維持期のリハビリテーション(以下リハ)にさしかかっている者が多く, 通所リハでの目的が機能, 能力維持である場合が多い. しかし, 実際には基本動作レベルでの向上, もしくは低下がみられる利用者も多く存在する. そこで, 今回, 当院通所リハ利用者における基本動作レベルの変化をもとに, 基本動作レベルの変化に関わる要因について検討したので報告する. 【対象と方法】当院通所リハ利用を平成12年4月1日より開始した全利用者のうち, 1年間継続して調査可能であった59名(男性31名, 女性28名, 平均年齢72.7±11.8歳)を対象に, 基本動作(寝返り, 起き上がり, 座位保持, トランスファー, 立ち上がり, 歩行)レベルを自立, 監視, 部分介助, 全介助の4段階に評価した. そして, 利用開始日と1年後の基本動作レベルの変化を比較し, 向上群, 維持群, 低下群に群分けした. さらに, 1. 心理的要因(鳥羽による意欲の指標), 2. 環境的要因(住居版による家族介護力スケール, 過剰介護度スケール, 家屋改造の充実度, 舗装具, 福祉用具の充実度), 3. 発症~利用開始日までの期間, 4. 利用頻度, 5. 年齢, 6. 介護度について調査し, A;向上群-維持群, B;向上群-低下群にこれらの要因に関連性があるかマン, ホイットニー検定を用いて統計処理を行い比較した. 【結果】基本動作レベルの変化は, 向上群11名, 維持群44名, 低下群4名であった. 1. では, Aは向上群に有意に高い点数であった. Bは有意差を認めなかったが, 向上群により意欲が高い傾向にあった. 2. では, A, B共に有意差は認めなかったが, 他の2群に比べて低下群は充実度が低い傾向にあった. 3. では, A, B共に向上群に有意に期間が短く, 特に脳血管障害では向上群は83.3%が発症1年以内, 維持群は87.5%が発症1年以上であった. 4. では, A, B共に有意差は認めなかったが, 向上群は81.8%, 維持群は70.0%が週3回以上, 低下群は75.0%が週2回以下の利用頻度であった. 5. では, A, B共に有意差は認めず, 6. では, Bは低下群に有意に高い介護度を示したが, Aは有意差を認めなかった. 【考察】結果より, 通所リハにおける基本動作レベルの向上には, 発症からの期間はもちろんのこと, 利用者本人の心理的要因が大きく関与していることがわかった. 心理面での改善が不十分な状態で在宅生活に移行した利用者及び介護者の心理面でのフォローをいかに行うかが重要な課題であることが推察された. また, 低下群は介護度が低く, かつ利用頻度が少ないという結果より, ケアプラン作成時の理学療法士の関わりも今後重要になってくると考える. また, 環境要因では, 低下群の充実度が低い傾向にあることから, 退院前訪問, 退院時の家族指導における理学療法士の役割の重要性を再認識した.
ISSN:0289-3770