一時的な脊髄刺激療法が奏効した断端部痛患者の1例

今回, 大腿部切断後の断端部痛を主訴とする患者に対し, 硬膜外鎮痛法, ケタミン持続注入療法, リン酸コデインの投与に加えて, 脊髄刺激療法(SCS)のテスト刺激を実施した結果, 疼痛の消失とallodyniaの軽減が得られ, 義足作成および歩行が可能になるなどADLの著しく改善が得られた患者を経験したので報告する. 患者は31歳男性, 交通事故にて左大腿部を切断後, 断端部痛が出現し, 坐骨神経切除術, 薬物治療, 神経ブロック療法などを施行するが, 疼痛の軽減が得られないため, 受傷2年4ヶ月後当科紹介となった. 初診時, 左大腿断端部に締めつけられるVAS5の持続痛, 加えて鋭いVAS1...

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Published inPAIN RESEARCH Vol. 14; no. 3; p. 59
Main Authors 加藤実, 柏崎美保, 伊藤真介, 中村卓, 佐伯茂, 小川節郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本疼痛学会 11.12.1999
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ISSN0915-8588

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Summary:今回, 大腿部切断後の断端部痛を主訴とする患者に対し, 硬膜外鎮痛法, ケタミン持続注入療法, リン酸コデインの投与に加えて, 脊髄刺激療法(SCS)のテスト刺激を実施した結果, 疼痛の消失とallodyniaの軽減が得られ, 義足作成および歩行が可能になるなどADLの著しく改善が得られた患者を経験したので報告する. 患者は31歳男性, 交通事故にて左大腿部を切断後, 断端部痛が出現し, 坐骨神経切除術, 薬物治療, 神経ブロック療法などを施行するが, 疼痛の軽減が得られないため, 受傷2年4ヶ月後当科紹介となった. 初診時, 左大腿断端部に締めつけられるVAS5の持続痛, 加えて鋭いVAS10の発作性疼痛を認めた. 大腿後面及び外側にAベータ及びC allodyniaを認め, 便坐に坐ることも, 義足の装着もできない状態であった. ドラッグチャレンジテストの結果は, ケタミン陽性以外, リドカイン, チアミラール, フェントラミン, モルヒネでは陰性であった. 当科受診4ヶ月目に, 薬物療法, 硬膜外持続鎮痛法, ケタミン持続注入療法, SCSなどを実施する目的で1ヶ月間の入院治療を計画した. 持続硬膜外カテーテルから局所麻酔薬の持続注入と2回のケタミン持続注入療法を施行した結果, 発作性の疼痛の強さと頻度の軽減及びAベータ及びC allodyniaの軽減が得られた. 残存した締めつけられる持続痛は, その後のリン酸コデインにより軽減された. しかし, 便坐に坐ることはできない状態であった. このためSCSのテスト電極挿入を予定した. 断端部に電気刺激が放散するよう電極の位置を調整中に, 3Vの電気刺激にて強いparesthesiaが左足全体に生じた. 電極を固定し, 1週間のテスト刺激を行った. この間, 締めつけられる痛み, 発作性の痛みは消失した. 軽度のAベータallodyniaのみが残存したものの, 便坐に坐ることも可能となった. このため, 患者の希望からSCS刺激装置の埋め込みは行わず退院とし外来経過観察とした. 外来ではリン酸コデインの投与中止後も, 疼痛は再発せず, 疼痛消失約1ヶ月半後には義足歩行が可能となった. 退院4ヶ月経過した現在, 疼痛の再燃は認めずリハビリ訓練中である. 本患者の断端部痛の疼痛機序とSCSの除痛機序との関連から, なぜSCSの効果が長期間維持されたかについて考察を加えて発表したい.
ISSN:0915-8588