1. 味蕾細胞間情報伝達物質は性ステロイドか?

味蕾内には数種の独立した細胞型が存在する. その中でIII型細胞は細胞内にシナプス小胞を含有し, 求心性シナプスを形成する. 一方, II型細胞は, T1Rs, T2Rsをはじめとした味覚受容体と, これらに共役するG蛋白質・gustducinやPLC-β2をはじめとした細胞内味覚情報伝達分子が発現することが知られているにもかかわらず, シナプス小胞は存在せず, 求心性シナプスも見られない. シナプス小胞をもつIII型細胞とシナプス小胞をもたないII型細胞は, 互いに独立した細胞型であることから, II型細胞が受容した味覚情報が, どのようにして味蕾内で伝達されているのか, 現在のところ解決さ...

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Published in九州歯科学会雑誌 Vol. 61; no. 4/5; p. 120
Main Authors 豊島邦昭, 瀬田祐司, 豊野 孝, 片岡真司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州歯科学会 25.11.2007
Kyushu Dental Society
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ISSN0368-6833

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Summary:味蕾内には数種の独立した細胞型が存在する. その中でIII型細胞は細胞内にシナプス小胞を含有し, 求心性シナプスを形成する. 一方, II型細胞は, T1Rs, T2Rsをはじめとした味覚受容体と, これらに共役するG蛋白質・gustducinやPLC-β2をはじめとした細胞内味覚情報伝達分子が発現することが知られているにもかかわらず, シナプス小胞は存在せず, 求心性シナプスも見られない. シナプス小胞をもつIII型細胞とシナプス小胞をもたないII型細胞は, 互いに独立した細胞型であることから, II型細胞が受容した味覚情報が, どのようにして味蕾内で伝達されているのか, 現在のところ解決されていない大きな謎である. 我々はII型細胞には, よく発達した滑面小胞体やミトコンドリアならびに脂質が存在し, ステロイド合成細胞と類似性を有することを微細形態学的に示した, 近年Baulieuらの研究により, 脳の神経細胞も独自にステロイドを合成し, 細胞間情報伝達の手段として用いていることが明らかとなり, ニューロステロイドと名付けられた, ステロイドは, 先ずコレステロールを材料にチトクロームP450scc(コレステロール側鎖切断酵素)の作用により, プレグネノロンがつくられ, これが生体内に存在するすべてのステロイド生合成の第一段階である, ステロイドは脂溶性で細胞膜を自由に透過できることから, 細胞内で分泌果粒は形成せず, 透出分泌によって細胞外へと容易に出ていき, ノンゲノミックあるいはゲノミック作用により細胞間情報伝達を調節する. 本研究は, ラット味蕾のII型細胞が, チトクロームP450sccをはじめとしたステロイド合成酵素を発現することを初めて示したものである.
ISSN:0368-6833