2.肺,鼻腔病変で対照的なステロイド反応性を示したWegener肉芽腫症類似疾患の1例

78歳, 女性. 主訴は左頭痛, 喀痰, 咳漱, 食欲不振. 胸部異常影の精査加療目的に近医より紹介入院. 入院時現症では, 鼻変形は認めず. 胸部聴診にて心雑音, ラ音等は聴取せず, 腹部平坦. 入院時検査所見では, CRPは高値を示し, 好中球優位の白血球増多を認めた. 尿検査で潜血反応を認めるも, 腹部エコーでは明らかな異常所見を認めず. 血清検査では, CEA, SCC, NSE等の腫瘍マーカーは陰性. ACE, lysozyme, p-ANCA, c-ANCAも陰性であった. sIL-2R, RAは強陽性を示した. 胸部レントゲン, CTにて右S3, S5, S10領域の胸膜に接し,...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 53; no. 2; p. 223
Main Authors 清水雄至, 長澤亨, 根本俊和, 松井伸一郎, 前原康延, 本間学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2003
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Summary:78歳, 女性. 主訴は左頭痛, 喀痰, 咳漱, 食欲不振. 胸部異常影の精査加療目的に近医より紹介入院. 入院時現症では, 鼻変形は認めず. 胸部聴診にて心雑音, ラ音等は聴取せず, 腹部平坦. 入院時検査所見では, CRPは高値を示し, 好中球優位の白血球増多を認めた. 尿検査で潜血反応を認めるも, 腹部エコーでは明らかな異常所見を認めず. 血清検査では, CEA, SCC, NSE等の腫瘍マーカーは陰性. ACE, lysozyme, p-ANCA, c-ANCAも陰性であった. sIL-2R, RAは強陽性を示した. 胸部レントゲン, CTにて右S3, S5, S10領域の胸膜に接し, 多発結節影を認めた. 右S3よりCTガイド下経皮肺針生検を施行. 得られた組織より, Langhans巨細胞の出現を伴う壊死性肉芽組織を認めた. 血管炎の所見を認めるものの, 血管壁は比較的保たれており, 壊死性血管炎の所見は見られなかった. 抗酸菌染色は陰性で, Wegener肉芽腫症が強く疑われ, ステロイド治療を開始した, 胸部陰影は一部疲痕を残し速やかに消失したものの, CRPは陰性化せず, 左頭痛も寛解, 増悪を繰り返した. 初診時より約8ヶ月後, 念のため脳CTを確認したところ, 左鼻腔内が比較的CT濃度の高い充実性変化を示していた. 頻回にわたり生検を施行するも, Wegener肉芽腫症を示唆する所見は得られなかった. しかしながら, 鞍鼻を認めており, 臨床経過より, Wegener肉芽腫症に矛盾しないものであった. Wegener肉芽腫症の約85%に陽性反応が見られるとされるc-ANCAが本症例では陰性で, 肺, 鼻腔病変に対する対照的なステロイド反応性に関与していた可能性がある.
ISSN:1343-2826