第4, 第5および第6脊髄神経後根結紮ラットの脊髄後角広作動域ニューロンの受容野の変化
ラットのL4-L6の脊髄神経後根(以下後根)をゆるく結紮するモデルを作成した結果, 結紮側では早期(結紮3日後にmechanical allodyniaが発現し, 非結紮側も少し遅れて(結紮2週後), mechanical allodyniaが発現した(mirror image). しかし, thermal hyperalgesiaは結紮側では発現せず, かえって早期(結紮3日-1週後)にはthermal hypalgesiaを示し, 非結紮側では結紮5-9週後にthermal hyperalgesiaを示した. 今回, これらの結果に脊髄後角の広作動域ニューロン(WDRニューロン)がいかに関...
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Published in | PAIN RESEARCH Vol. 13; no. 3; p. 113 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本疼痛学会
05.12.1998
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Summary: | ラットのL4-L6の脊髄神経後根(以下後根)をゆるく結紮するモデルを作成した結果, 結紮側では早期(結紮3日後にmechanical allodyniaが発現し, 非結紮側も少し遅れて(結紮2週後), mechanical allodyniaが発現した(mirror image). しかし, thermal hyperalgesiaは結紮側では発現せず, かえって早期(結紮3日-1週後)にはthermal hypalgesiaを示し, 非結紮側では結紮5-9週後にthermal hyperalgesiaを示した. 今回, これらの結果に脊髄後角の広作動域ニューロン(WDRニューロン)がいかに関与しているかを検討した. 〔方法〕31匹の雄のSprague-Dawleyラットを用いた. 19匹にL4, L5, L6後根のそれぞれに7-0絹糸を用いて1本あるいは2本ずつゆるく全周性に結紮し(結紮群), 残り12匹では硬膜切開のみを施行した(対照群). 手術5週後(結紮群:5匹, 対照群:5匹)および22週後(結紮群:12匹, 対照群:9匹)に酸素-ハロセン(1.5-2%)麻酔下にL1-L5の椎弓切除を行った後, タングステン微小電極を脊髄後角に刺入し, 以下の検査を行った. まず, ラットの後肢足底をvon Frey filamentおよび熱プレートで刺激し, 機械的刺激にも熱刺激にも反応するWDRニューロンを同定した. その後, von Frey filamentを用いてそのニューロンの足底での末梢受容野を測定するとともに, 熱プレートの温度を上昇させ活動電位の発生頻度の変化を記録した. 〔結果〕WDRニューロンに対する末梢受容野は手術5週後においては結紮群と対照群に差はみられなかったが, 22週後では結紮群の結紮側において明らかに広がっていた(約2.3倍). 非結紮側では対照群と差はみられなかった. WDRニューロンの活動電位の発生頻度については, 5週後においては結紮群と対照群に差はみられなかったが, 22週後では結紮群の結紮側において明らかに自発発射が多かった(約2倍). また, 熱刺激に対する反応は22週後に結紮群の非結紮側では結紮側に対して増強していた(約1.4倍). 〔考察〕結紮22週後, WDRニューロンの末梢受容野が広がり, かつ活動電位の自発発射が多かったことは, 後期のmechanical allodyniaの発現にWDRニューロンが関与していることを示唆する. また, 非結紮側においてWDRニューロンが熱に対して過敏に反応したことはthermal hyperalgesiaとの関係が示唆された. |
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ISSN: | 0915-8588 |