16. 音波歯ブラシによる口腔刺激の唾液に及ぼす影響
高齢者における口腔乾燥状態の改善方法について検討する目的で, 音波歯ブラシSONICARE(R)使用による口腔乾燥感, 唾液湿潤度および唾液曳糸性の変化について検討した. 対象は, 老人保健施設に入所中の65歳~99歳の要介護高齢者36名とした. 対象者に対して, 歯科衛生士が, 週3回4週間, 音波歯ブラシの植毛部の裏側を用いて, 両側の頬粘膜と舌の左右辺縁部後方部の4カ所を, 1箇所にっき10秒ずっ, 計40秒間マッサージを行った. 口腔乾燥度の評価は, 柿木が報告した臨床診断基準を用いて評価した. 舌粘膜の唾液湿潤度は湿潤度測定紙(KISO-WeT)を用いて10秒法で行い, 開始前3mm...
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Published in | 九州歯科学会雑誌 Vol. 61; no. 4/5; pp. 130 - 131 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州歯科学会
25.11.2007
Kyushu Dental Society |
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ISSN | 0368-6833 |
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Summary: | 高齢者における口腔乾燥状態の改善方法について検討する目的で, 音波歯ブラシSONICARE(R)使用による口腔乾燥感, 唾液湿潤度および唾液曳糸性の変化について検討した. 対象は, 老人保健施設に入所中の65歳~99歳の要介護高齢者36名とした. 対象者に対して, 歯科衛生士が, 週3回4週間, 音波歯ブラシの植毛部の裏側を用いて, 両側の頬粘膜と舌の左右辺縁部後方部の4カ所を, 1箇所にっき10秒ずっ, 計40秒間マッサージを行った. 口腔乾燥度の評価は, 柿木が報告した臨床診断基準を用いて評価した. 舌粘膜の唾液湿潤度は湿潤度測定紙(KISO-WeT)を用いて10秒法で行い, 開始前3mm未満群を低値群, 3mm以上群を高値群とした. 唾液曳糸性は, 井上鉄工所製の曳糸性測定器ネバメーターにより, 安静時唾液をシリンジで採取後5分以内にWet Modeで測定した. その結果, 臨床診断基準では, 4週後, 6週後になるにしたがって, 乾燥度の低下を示す者が有意に(p<0.01)に増加した. 唾液湿潤度は, 低値群では, 1.2±0.9mmが, 4週後に3.3±3.9mm, 6週後には4.1±3.3mmと有意(p<0.02)に高くなった. 一方, 高値群では, 7.1±5.2mmが4週後に5.1±4.7mm, 6週後に3.5±3.3mmと有意(p<0.02)に低くなり, いずれの群も正常範囲に収束することが認められた, 曳糸性は, 開始前4.23±2.0mmだった値が4週間後には, 2.51±0.8mmと有意(p<0.02)に低下したが, 6週後では, 3.44±2.1mmと4週後よりも高くなった, 音波歯ブラシによる振動刺激により, 口腔乾燥群では口腔乾燥の改善が見られ, 高値群では, 舌や嚥下機能の改善した可能性が示唆された. 以上から, 音波歯ブラシは, 今後, 要介護高齢者の口腔乾燥改善にとって, 有効なツールの一つであると思われた. さらに, 唾液曳糸性の高い唾液は高齢者の嚥下困難感と関連する可能性が示唆されたことから, 音波歯ブラシによる口腔刺激は口腔乾燥状態や唾液の性状改善に有用であると考えられた. |
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ISSN: | 0368-6833 |