3.多彩な組織像を呈した乳腺紡錘細胞癌の1例

病理学的に多彩な組織像を呈し, 急な転帰をたどった乳腺紡錘細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は77歳, 女性. 2003年6月右乳房腫瘤を自覚し, 7月右乳癌の疑いで当科紹介となった. 初診時, 右乳房A領域に48×43mmの腫瘤を触知し, 画像上も乳癌の診断で手術が予定されたが, 術前検査施行中に急速な腫瘤の増大を認め早期入院となった. 術前の針生検では明らかな癌の所見はなく, 間質由来の肉腫または化生性乳癌が疑われた. 入院時には腫瘤は80×65mmまで増大し, T3N0M0stage IIIAの診断で乳房部分切除術が施行された. センチネルリンパ節生検で陽性であったため, lev...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 2; pp. 175 - 176
Main Authors 二宮淳, 武井寛幸, 堀井吉雄, 末益公人, 黒住昌史, 井上賢一, 田部井敏夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2004
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Summary:病理学的に多彩な組織像を呈し, 急な転帰をたどった乳腺紡錘細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は77歳, 女性. 2003年6月右乳房腫瘤を自覚し, 7月右乳癌の疑いで当科紹介となった. 初診時, 右乳房A領域に48×43mmの腫瘤を触知し, 画像上も乳癌の診断で手術が予定されたが, 術前検査施行中に急速な腫瘤の増大を認め早期入院となった. 術前の針生検では明らかな癌の所見はなく, 間質由来の肉腫または化生性乳癌が疑われた. 入院時には腫瘤は80×65mmまで増大し, T3N0M0stage IIIAの診断で乳房部分切除術が施行された. センチネルリンパ節生検で陽性であったため, level IIまでのリンパ節郭清を行った. 摘出標本では腫瘤は66×50mmの大きさで灰白色を示し, 内部には出血壊死巣が認められた. 病理組織では腫瘍の大部分はspindle cellから構成され紡錘細胞癌の診断であったが, 部分的にはmatrix-producingやangio-liposarcoma様の構造も見られ, 多彩な組織像を呈していた. 量は少ないが明らかな癌巣も認めた. 退院約1ヶ月後の10月に咳嗽, 背部痛が出現し, 胸部X-pで両肺野に多発結節影を認めた. 多発肺転移の診断で内分泌科に転科となったが, 本人が化学療法を希望されず, 術後2ヶ月で呼吸不全のため死亡となった.
ISSN:1343-2826