膝関節回旋可動域計測についての検討

【はじめに】膝関節(脛骨大腿関節)の回旋運動は, 下肢全体の回旋運動には必要不可欠である. しかしながら, 膝回旋可動域はゴニオメーターを用いて計測するのは極めて困難である. 現在明らかにされている計測方法は, 超音波, レントゲン, CTを用いたものであり, 簡便な方法は明らかにされていない. 本研究の目的は, 解剖学的標点を基に, 臨床で有用かつ簡便な方法としてdeviceを用いた膝回旋ROM計測の方法を試み, 定義されている股関節の回旋ROを参考にして, 左右差から検討したので報告する. 【対象と方法】対象は下肢に何らかの障害や既往のない健常成人34名(男性16名, 女性18名), 平均...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 92
Main Authors 鈴木克彦, 伊橋光二, 南澤忠儀, 百瀬公人, 三和真人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】膝関節(脛骨大腿関節)の回旋運動は, 下肢全体の回旋運動には必要不可欠である. しかしながら, 膝回旋可動域はゴニオメーターを用いて計測するのは極めて困難である. 現在明らかにされている計測方法は, 超音波, レントゲン, CTを用いたものであり, 簡便な方法は明らかにされていない. 本研究の目的は, 解剖学的標点を基に, 臨床で有用かつ簡便な方法としてdeviceを用いた膝回旋ROM計測の方法を試み, 定義されている股関節の回旋ROを参考にして, 左右差から検討したので報告する. 【対象と方法】対象は下肢に何らかの障害や既往のない健常成人34名(男性16名, 女性18名), 平均年齢20.5歳である. 膝回旋ROMの計測は, VICON clinical managerで使用するKnee Alignment Deviceを大腿骨内外側上顆および脛骨, 腓骨の内外側果に貼付した. 被験者は膝関節90゜屈曲した腹臥位となり, 1名の理学療法士が他動的に内外旋させ, 下腿長軸延長線上からデジタルカメラを用いて記録した. 記録した画像はPCに取り込み, 内旋および外旋時の大腿骨内外側上穎を結ぶ線と脛骨, 腓骨の内外側果を結ぶ線のなす角度を1゜単位で計測した. 股関節の回旋ROMは, 股, 膝関節を90゜屈曲した背臥位でゴニオメーターを用いて1゜単位で計測した. 統計学的検定は相関係数の検定を用い, 危険率5%を有意水準とした. 【結果】被験者34名, 68関節における股関節の内外旋の合計ROMの平均(SD)は, 右86.8゜(10.8゜), 左88.5゜(9.1゜)であり, 左右のROMの間に強い相関関係が認められた(p<0.001). 膝関節の内旋と外旋の合計ROMは右44.6゜(5.5゜), 左42.7゜(7.1゜)であり, 左右のROM間の相関は弱かった. そこで, 膝の内旋および外旋ROMの左右差が5゜以上認めた被験者は, 34名中18名(53%), 23名(68%)であった. 【考察およびまとめ】膝関節回旋ROM計測には, 股, 足関節の回旋運動や皮膚の動きが影響すると考えられる. 本研究では被験者は複臥位として股関節の影響を最小限とし, 純粋な膝回旋を測定するため, 大腿骨内外側穎と脛骨, 腓骨の内外側果のなす角度を回旋角度と定義した. しかしながら, 股関節の回旋ROMに比べ, 膝関節は対象の半数以上が5゜以上の左右差を認めた. したがって, 膝関節の障害を有する症例の膝回旋ROMを健側(非障害側)ROMと比較する際, 十分な注意が必要であることが示唆された. 今後, 本研究の膝回旋ROM計測方法の信頼性や妥当性を検証し, 臨床で応用できるよう継続的な研究が必要であると考える.
ISSN:0289-3770