20. 筋電図を用いた股関節周囲筋筋力強化訓練法の評価

多くの股関節疾患において, その進行に伴い股関節周囲筋は萎縮し, 特に早期より大殿筋, 中殿筋に著しいことが知られている. よって, この疾患に対する筋力増強訓練はこれらの筋の機能を回復するために行うべきである. 特定の筋を増強するためには, その筋を興奮させることが必要であり, 術後の運動療法時の安全を計るためや, 股関節の痛みを誘発しないため, 股関節に加わる力が小さいことが要求される. よって, この疾患に対する有効な筋力増強訓練法は目標とする筋のみが活動し, その他の筋は活動しない運動であると考えられる. そこで本研究の目的はこの理想的な筋活動を起こす運動を見出すこととした. 対象は健...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 25; no. 4; p. 247
Main Authors 渡壁誠, 後藤英司, 宮津誠, 原田吉雄, 朝野裕一, 橘内勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.07.1988
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:多くの股関節疾患において, その進行に伴い股関節周囲筋は萎縮し, 特に早期より大殿筋, 中殿筋に著しいことが知られている. よって, この疾患に対する筋力増強訓練はこれらの筋の機能を回復するために行うべきである. 特定の筋を増強するためには, その筋を興奮させることが必要であり, 術後の運動療法時の安全を計るためや, 股関節の痛みを誘発しないため, 股関節に加わる力が小さいことが要求される. よって, この疾患に対する有効な筋力増強訓練法は目標とする筋のみが活動し, その他の筋は活動しない運動であると考えられる. そこで本研究の目的はこの理想的な筋活動を起こす運動を見出すこととした. 対象は健常者とし, 検査運動が長座位, 側臥位での股関節内外転, そして四つばいでの股関節伸展維持の3種である. 更に運動中の筋活動に対する下肢内外旋の影響についても分析した. 検査筋は代表的な股関節周囲筋である. 長座位, 側臥位での股関節内外転時において, 多くの筋の活動がこれらの運動に関与していることが分かった. ところが, 四つばい, 膝屈曲状態で股関節伸展を維持させると, 特に下肢外旋位では大殿筋, 中殿筋, 大腿筋膜張筋のみの活動が観測された. また, 寛骨臼回転骨切り術後の患者の筋活動を調べると, 四つばい, 膝屈曲位, 下肢外旋位での股関節伸展維持でのみ目標とする筋の大きな活動が得られた. 質問 九州労災病院 井原秀俊:股関節周囲筋は周辺の脊柱筋 下肢筋と協調して骨盤支持や荷重移動機能があり, 非荷重下での訓練は根本的には非生理的であり, 可及的早期に荷重下での訓練に移行すべきではないか. 更に, 一部の筋活動のみ誘発し, 他筋の活動を抑えた肢位での訓練は, 周囲筋群の協調作用を無視するという意味で有害とは考えられないか. 答 後藤英司:変股症の保存的治療として外来で運動療法が処方されるが, どのようなexerciseが一番有効かはわからない. また, 患者さんは疼痛を訴えるので, より痛みの少ない, つまり関節に負荷の少ない運動が必要である. そこで, 萎縮筋をより選択的にトレーニングすることが重要と思われ, それにより特に術後の安全性もはかることができる. 質問 国立塩原温泉病院 野田幸男:筋活動の有無を筋電図の振幅だけで判断するのはいかがなものでしょうか. もしできれば, 各筋の最大収縮時のintegrated EMGを測定し, %max EMG値を求められてはいかがでしょうか. 答 後藤英司:生体力学的検討はまだしていないが, 実際に変股症患者に種々の運動を行って疼痛の程度を調べてみると(末期変股症例では不能であった), 四つばいの本運動が疼痛が少なく, 股関節の負荷は少ないと思われる. 追加発言 渡壁誠(共同演者):特に大殿筋, 中殿筋を活動させる運動を見出そうとして, こういった研究を行いました. 多くの筋活動を含む運動を否定するわけではなく, 筋の回復のためにはこういった運動も必要なのではないかと考えます.
ISSN:0034-351X