7.若年成人男性に発症した巨大結腸症の1例

患者は24歳男性. 主訴は下腹部痛, 下腹部膨満感であり近医で腹部単純レントゲン, バリウム注腸, 骨盤CT検査を施行し巨大結腸症の診断で当院消化器科紹介となり精査加療目的で入院となる. 入院時の腹部単純X-Pで腹部は直腸~S状結腸にかけて著明な拡張を認め, また腹骨盤CTでは直腸内に巨大な硬便と直腸の拡張に伴う膀胱の圧排を認めた. 入院後は禁食, 補液, 摘便, 浣腸, 下剤内服で経過観察とし, 尿閉に対し導尿で対処するも改善なく入院3病日目に膀胱カテーテルを留置し, 入院時より嘔気, 腹痛の訴えもないため入院5病日目より流動食を開始した. 入院17病日目に大腸内視鏡検査を施行するも, 硬便...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 4; p. 353
Main Authors 真下利幸, 細沼賢一, 堀内克彦, 猿谷哲也, 高橋仁公, 井上昭彦, 野田大地, 五十嵐清美, 尾形敏郎, 高井良樹, 佐藤尚文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.11.2004
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Summary:患者は24歳男性. 主訴は下腹部痛, 下腹部膨満感であり近医で腹部単純レントゲン, バリウム注腸, 骨盤CT検査を施行し巨大結腸症の診断で当院消化器科紹介となり精査加療目的で入院となる. 入院時の腹部単純X-Pで腹部は直腸~S状結腸にかけて著明な拡張を認め, また腹骨盤CTでは直腸内に巨大な硬便と直腸の拡張に伴う膀胱の圧排を認めた. 入院後は禁食, 補液, 摘便, 浣腸, 下剤内服で経過観察とし, 尿閉に対し導尿で対処するも改善なく入院3病日目に膀胱カテーテルを留置し, 入院時より嘔気, 腹痛の訴えもないため入院5病日目より流動食を開始した. 入院17病日目に大腸内視鏡検査を施行するも, 硬便は拡張した直腸内に充満していたため直腸全体の観察は困難であり, 直腸下部と思われる部位より生検を行い終了とし入院21病日目に再度施行した腹骨盤CTで直腸内の硬便は縮小傾向であったが結腸の拡張および近医で施行されたバリウム造影剤の逆行の所見も認めたことより保存的治療は困難であると判断し外科転科, 入院26病日目に直腸離断, 人工肛門造設術, 肛門括約筋生検施行. 入院30病日目より食事摂取開始としたが経過は良好であり入院40病日目の腹部レントゲンでは結腸の拡張は認めなかった. 術後に膀胱機能評価目的で膀胱内圧測定を施行し, 軽度の運動神経障害性膀胱を認め, 尿閉の原因は不明であるが, おそらく直腸の圧排が原因であると考え, 現在は膀胱カテーテルを抜去しているが排出は良好である. 直腸生検, 肛門括約筋生検の結果は明らかな異常所見を認めずヒルシュスプルング病は否定的であった. 現段階において我々は知的障害に伴う便意感の鈍麻, 大腸偽性腸閉塞症, 習慣性便秘等を疑っているが, 今後は人工肛門閉鎖に際し肛門直腸内圧測定, 肥厚した直腸粘膜の再生検, アセチルコリン, コンゴレッド等の特殊染色の施行を含め, さらなる原因検索が必要であると考えられた.
ISSN:1343-2826