11.脳性麻痺の双生児3組における股変形-体重負荷の及ぼす影響について

【目的】脳性麻痺(以下CPと略す)の双生児で, 術前つかまり歩き以下の下肢機能レベルと, ほぼ同程度の股X線像を呈した症例に対し, 股関節軟部組織手術を幼少時期に施行したが, その効果と術後の体重負荷が股関節に及ぼす影響につき検討し, 若干の所見を得たので報告した. 【対象および方法】症例は, 3組の痙直型両麻痺の一卵性双生児で, 第1, 第2組は女子例, 第3組は男子例, 初診および手術時年齢は各組それぞれ4歳と1歳, 1歳と5歳6歳と4歳で, 術前の下肢機能レベルは, つかまり歩き以下であった. 手術はいずれも股軟部組織手術(内転筋, 腸腰筋, ハムストリング等に対する組み合わせ手術)のみ...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 22; no. 5; pp. 262 - 263
Main Authors 上原朗, 石田三郎, 山中力, 村田忠雄, 野平勲一, 佐々木健, 佐藤優, 藤川博正, 岡本弦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1985
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】脳性麻痺(以下CPと略す)の双生児で, 術前つかまり歩き以下の下肢機能レベルと, ほぼ同程度の股X線像を呈した症例に対し, 股関節軟部組織手術を幼少時期に施行したが, その効果と術後の体重負荷が股関節に及ぼす影響につき検討し, 若干の所見を得たので報告した. 【対象および方法】症例は, 3組の痙直型両麻痺の一卵性双生児で, 第1, 第2組は女子例, 第3組は男子例, 初診および手術時年齢は各組それぞれ4歳と1歳, 1歳と5歳6歳と4歳で, 術前の下肢機能レベルは, つかまり歩き以下であった. 手術はいずれも股軟部組織手術(内転筋, 腸腰筋, ハムストリング等に対する組み合わせ手術)のみを実施し, 経過観察期間は, 第1組4~16歳, 第2組1~11歳, 第3組1~6歳までと経年的に追い, 股関節は正面像を主とし, ラウエンスタイン像のあるものは甲斐法で測定した. 【結果】1)体重を負荷していない双生児のCPでは, 術前いずれも160°以上の高度外反股がみられ, 前捻角の過大が認められた. 2)幼少時における股軟部組織手術は, 側方化や亜脱臼をよく改善させ, 股関節の動きを回復し, さらに体重負荷により骨性の変化である白蓋形成不全や外反股をも改善しうるものであることを知った. 外反の矯正は最高20°であった. 3)一卵性双生児の獲得されたつかまり歩き以上の機能レベルの差は, 体重負荷能力により, 外反股, 前捻角に少差となって認められた. 質問 産業医大 佐伯千恵子:切腱術で, 私達は股関節の屈曲能力が低下するので腸腰筋の切腱は行うが, 延長はあまり行っていませんが, 腸腰筋を扱った症例と, そうでない症例で, 最終的な歩行能力に差があったか. 答 上原朗:結論から申しますと, 私も腸腰筋は全部切ることはできるだけさけるべきだと思っています(年長児重度例であるなら別ですが). 第1例の場合, 私自身がメスを加えたケースでないのですが, 少しく現在でも, やや歩行上問題が残ってはいます. 幼少時でやりましたら, すぐその付近にくっつき, 比較的問題が少ない気がしますが, 最近は, 私はpsoasだけを切るようにしております. 質問 長崎大医短 穐山富太郎:(1)股屈曲拘縮, 亜脱臼に対する手術時期をどのようにお考えですか. (2)腸腰筋腱に対する処置は腱延長術をする方が正しいと考えますが. 答 上原朗:手術の時期に関しては, 後天的に発生するCPの股亜脱臼, 脱臼は, 1歳後半頃から側方化が始まり, 股周辺筋のトーンがそれほど強くないケースは, 4~6歳頃までに, 亜脱臼, 脱臼へとすすみがちですので, その頃が多いと考えます, また, 4~5歳にみられる両側股脱例は, Rigor spasticな重症児ですから, より早い時期(臨床的X線的にサインがあれば, 1歳あるいはそれ以前でもと考えますが)に行った方が良いと思います. 質問 高知県立子鹿園 江口寿栄夫:重度CPのWind blown deformityのような時に, 片側の脱臼があって, 他方はそうでない(位置がよい)ものがあるが, このような場合の, 先生の御見解はどうでしようか. (体重をかけない関節に対して)答 上原朗:Wind blown deformityの, 患児の求心位の良い方はどんな処置をするかの御質問でしたが, この場合, その股は, むしろ外転, 外旋位になってしまっている場合が多いので, 外側で外転, 外旋筋群のレリースが適当と考えています.
ISSN:0034-351X