セッションIII 細胞治療:臨床的応用

セッション3では, 細胞療法の最先端を担っている4名の講演者を招き, 特に固形腫瘍に対する細胞療法の戦略とその成績, さらに本療法における問題点を指摘していただいた. 固形腫瘍患者において腫瘍関連抗原を特異的に認識する細胞障害性リンパ球を誘導する方法と, 同種末梢血幹細胞移植による移植片対腫瘍効果を誘導する方法の2つが現時点での主な流れとなっている. さらに抗腫瘍活性を持つ他のリンパ球集団(NKT, NK細胞等)を効果細胞として用いる方法も盛んに検討されている. 本セッションでは異なる戦略に基づいたそれぞれのアプローチについて講演がなされた. Robert S. Negrin博士(Stanfo...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. suppl; pp. 172 - 173
Main Author 原田実根
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 10.11.2003
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:セッション3では, 細胞療法の最先端を担っている4名の講演者を招き, 特に固形腫瘍に対する細胞療法の戦略とその成績, さらに本療法における問題点を指摘していただいた. 固形腫瘍患者において腫瘍関連抗原を特異的に認識する細胞障害性リンパ球を誘導する方法と, 同種末梢血幹細胞移植による移植片対腫瘍効果を誘導する方法の2つが現時点での主な流れとなっている. さらに抗腫瘍活性を持つ他のリンパ球集団(NKT, NK細胞等)を効果細胞として用いる方法も盛んに検討されている. 本セッションでは異なる戦略に基づいたそれぞれのアプローチについて講演がなされた. Robert S. Negrin博士(Stanford University, USA)は, GFPとルシフェレースの遺伝子を導入された細胞の動態を, CCDカメラを用いて実験動物の体外からモニターする手法を開発し, これにより移入細胞集団が個体内に分布するパターンの違いを明確に示した. 即ち同種反応性Tリンパ球は投与後数日でGVHD好発臓器に分布し抗腫瘍効果を十分示さないのに対し, CD1d非拘束性NKT細胞集団であるcytokine induced killer(CIK)細胞は腫瘍部に選択的に集積し強い抗腫瘍活性を示した. この結果は, 抗腫瘍活性を持つ効果細胞が腫瘍局所に集積することが宿主からの腫瘍除去に重要であることを改めて示している. CIK細胞集積の機構は未だ明らかではないが, (1)移入細胞の反応抗原特異性に強く依存する可能性, (2)効果細胞のサブポピュレーションを活性化するリガンドの局在, などが予想された. これらの解明およびCIK細胞の機能解析は, 今後の細胞療法の効果増強に寄与すると思われる.
ISSN:0546-1448