3. 慢性期に至るまで下肢筋緊張低下を認める脳血管障害患者についての臨床的検討

急性期を過ぎた脳卒中片麻痺患者の下肢筋緊張異常について, 特にその低下例に注目し, 他の臨床所見や個人の状態との関連を検討した. 対象は, 昭和60年8月より昭和62年3月までに当科を退院した脳卒中患者中, 小脳に病巣のある例および両側麻痺例を除き, 退院時点で発症後3ヵ月以上を経過していた121例(平均年齢68.1±8.9歳, 男性59例, 女性62例)である. 検討に際しては, 症例を退院時点での臨床所見より, 下肢筋緊張度について, I群:低下例, II群:正常-軽度亢進例, III群:亢進例と大きく3群に分類した. I群33例, II群36例, III群52例であった. I群で麻痺の軽...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 24; no. 6; pp. 346 - 347
Main Authors 江口清, 草野修輔, 渡辺俊允, 尾賀幹, 林泰史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1987
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:急性期を過ぎた脳卒中片麻痺患者の下肢筋緊張異常について, 特にその低下例に注目し, 他の臨床所見や個人の状態との関連を検討した. 対象は, 昭和60年8月より昭和62年3月までに当科を退院した脳卒中患者中, 小脳に病巣のある例および両側麻痺例を除き, 退院時点で発症後3ヵ月以上を経過していた121例(平均年齢68.1±8.9歳, 男性59例, 女性62例)である. 検討に際しては, 症例を退院時点での臨床所見より, 下肢筋緊張度について, I群:低下例, II群:正常-軽度亢進例, III群:亢進例と大きく3群に分類した. I群33例, II群36例, III群52例であった. I群で麻痺の軽度な例(stage V)の中には, 視床VL核の障害が想定される例があり, 筋緊張異常と特殊な病巣との関連は否定できなかったが, 全体的には, CT所見や機能障害(麻痺の程度, 感覚障害, 高次脳機能障害, 痴呆, 尿失禁等)より考えられる病巣の広がりについて, II群では障害の軽度な例が多くみられるものの, I群とIII群の間に有意な差異は認めなかった. 年齢に関しては, 3群間に有意差はなかった. 性差に関して, I群には有意に女性が多くみられた(p<0.01). また, 糖尿病の合併がI群において高頻度に認められた(p<0.05). 屋内歩行自立に至った例は, I群が最も少数であったが, III群との間に有意差は認めなかった. 以上については, 観察期間や評価法に関して, 今後さらに検討が必要と考えられた. 質問 国療村山病院 永田雅章:(1)Br.stage II-IIIで歩行が自立し得なかったのは, 主に立脚期の膝折れのためでしょうか. (2)筋緊張低下例で, 長下肢装具の長期の使用によって膝折れが起こらなくなり, 短下肢装具で歩行自立する例がかなり臨床場面で認められますが, いかがですか. 答 江口清:(1)筋緊張低下例で歩行自立に至らない例では, やはり膝折れ(立脚期の)が問題と考えられるが, 今回は, 歩行能力に対する他の因子について詳細に検討していないこと, 筋緊張低下例では, 広範囲病巣を持つ例も少なくないことより, 確定はできない. (2)今後, できるだけ長期フォローする例を増やして対応したいと思います. (3)今回は, DMについて, 程度や合併症についての検討が不十分だが, 末梢神経障害の存在については, 第一に考えられる他, 中枢より末梢の神経筋ユニットに至る系のいずれかに筋tonusを発現するに際しての障害が存在する可能性も否定できないと思う.
ISSN:0034-351X