2. 在宅成人重度障害者の医療ニードについて

リハビリテーションを行う上で, 通院困難な重度障害者の医学的管理も重要なことであり, 当院では開設当初より内科的に安定している障害者を対象に, 在宅医療を行っている. 今回, 在宅成人重度障害者の医療ニードについて調査を行った. 対象は昭和62年1月1日より12月31日までの当院在宅医療部で管理した男性27名(平均年齢73.2歳), 女性23名(同77.3歳)の計50名である. 主病名は, 脳梗塞, 慢性硬膜下血腫, 痴呆が多く, 併発症として高血圧, 糖尿病を認めた. 起居移動能力は全介助28名, 床上動作自立2名, 屋内歩行介助11名, 屋内歩行自立2名である. 管理中の合併症は, 50名...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 25; no. 5; pp. 342 - 343
Main Authors 三宅徹也, 大井通正, 池田信明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1988
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
Online AccessGet full text
ISSN0034-351X

Cover

More Information
Summary:リハビリテーションを行う上で, 通院困難な重度障害者の医学的管理も重要なことであり, 当院では開設当初より内科的に安定している障害者を対象に, 在宅医療を行っている. 今回, 在宅成人重度障害者の医療ニードについて調査を行った. 対象は昭和62年1月1日より12月31日までの当院在宅医療部で管理した男性27名(平均年齢73.2歳), 女性23名(同77.3歳)の計50名である. 主病名は, 脳梗塞, 慢性硬膜下血腫, 痴呆が多く, 併発症として高血圧, 糖尿病を認めた. 起居移動能力は全介助28名, 床上動作自立2名, 屋内歩行介助11名, 屋内歩行自立2名である. 管理中の合併症は, 50名中40名(80%)に認め, 発熱, 脱水, 褥創, 誤嚥性肺炎, 尿路感染症が多く, 往診 訪問で対応できない場合, 外来受診, 入院が必要であった. 合併症を認める症例では, 往診と訪問回数はいずれも頻回となり, 入院の必要度も高くなっている(有合併症群で訪問1.56回/週, 入院5.16日に1日-中央値, 30日間で7人管理すると空床1床が必要). ショートステイは年齢, 重症度によっては利用できない場合もあった. 以上のことより, 在宅成人重度障害者の医療ニードは高く, 在宅医療を行うためには入院施設の確保等, 医療機関の施設 体制の充実, 更に医師と看護婦, 医療機関相互の連携が重要と考えられる. 質問 澤村誠志(座長):病院が地域の中核的機能をもって, 往診, 訪問看護等と積極的にやっておられるのはすばらしいが, 医療経済上の見地からいかがか. 質問 兵庫県立柏原病院 南久雄:在宅訪問指導部のスタッフの構成で, 医師, 看護婦の人数は何人で行っておられますか. 質問 青森県立はまなす学園 岩崎光茂:ショート ステイができないものについて, 理由となったものは, 何であったでしょうか. 答 追加発言 三宅徹也:(1)経営的な面では, まず4月1日改訂以降, 看護婦週2回の訪問は認められたが, 実際にはそれ以上の訪問が必要な症例が多く, 経営的には非常に困難である. いかに重症でも, 家族, 本人が在宅生活を希望するのであれば, 医療機関, 福祉側の体制を整え, 医療機関および障害者を抱えた家庭への経済的な援助を確保していく必要があると考える. (2)管理数と空床必要度に関しては, 常時30-40名の在宅患者を管理しており, 30日間7名管理すれば1床必要であると考える. 数年前では10名に1床であり, 重症化している. (3)在宅医療部のスタッフは, 調査開始時点では, 理学診療科医師2名と専任ナース1名+半専任2名(外来との兼任)で行っていた. 現在は研修医も含め5名の医師と前述のナース体制で行っている. (4)ショートステイ利用不可例については年齢 重症度で利用不可能でなることが多いが, 医学的管理が濃厚に必要と考えられる場合(特に誤嚥を繰り返している)は, ショートステイ利用可能と判断している.
ISSN:0034-351X