21. 作業療法による視空間認知能の改善について-横山式視空間認知テストによる検討

【目的】視空間失認に対する, 視空間認知を刺激するような作業療法の効果, すなわち学習転移的アプローチの有用性について, 当教室の横山らの定量的視空間認知テストを用いて検討を加えた. 【対象と方法】対象は当院入院時に横山式視空間認知テスト(100点満点)で90点未満の脳卒中後遺症患者41名. これらを, 通常のADLおよび運動訓練を主体とした対照群8名と, 視空間認知を刺激すると思われる, ペグボード, 塗り絵, 刺繍などの作業療法を行ったOT群33名とに分けて評価した. 患側への注意, 健側での作業を促すなどの機能的アプローチは両群とも常時, 同等に行った. 両群は機能的には同レベルにあった...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 26; no. 5; p. 380
Main Authors 東郷伸一, 川津学, 田島哲朗, 田中信行, 小野知子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1989
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Summary:【目的】視空間失認に対する, 視空間認知を刺激するような作業療法の効果, すなわち学習転移的アプローチの有用性について, 当教室の横山らの定量的視空間認知テストを用いて検討を加えた. 【対象と方法】対象は当院入院時に横山式視空間認知テスト(100点満点)で90点未満の脳卒中後遺症患者41名. これらを, 通常のADLおよび運動訓練を主体とした対照群8名と, 視空間認知を刺激すると思われる, ペグボード, 塗り絵, 刺繍などの作業療法を行ったOT群33名とに分けて評価した. 患側への注意, 健側での作業を促すなどの機能的アプローチは両群とも常時, 同等に行った. 両群は機能的には同レベルにあった. 【結果】退院時の平均改善点数は, 対照群の2.5±2.4点に比してOT群は15.5±13.5点と有意の改善が認められた. 改善点数による比較でも, 0点は9%(対照群37.5%), 21点以上の著明改善者は23.3%(対照群0%)であった. テスト中の各項目ごとの改善度では, 細かな形の恒常性や上下左右の空間定位は改善しなかったが, 半側無視, dot countingでは最も著明な改善がみられた. 【結論】横山らの定量的視空間認知テストにより, 脳卒中後の視空間認知障害は, 通常のADL, 運動訓練のみでは改善されず, 視空間認知を刺激するような作業療法によって改善されること, すなわち学習転移的アプローチの有用性が示唆された. 質問 国療東京病院 茂木紹良:Control群の期間が有意に長いのでは, control群の改善率の低下が時間的なものにすぎないかもしれない. 患者群発症からの期間ごとの改善率はどうでしょうか. 質問 防衛医大 鈴木英二:認知テストの得点の向上はどのような意味で有意義か. OT訓練は, 心理テストの練習になっているのではないか. 質問 横浜市総合リハセンター 白野明:認知機能テストの結果が入院リハ中に向上し退院後に低下したことについて, 個々の認知機能以外に全般的精神機能レベルがテスト結果に影響しているとも考えられるが, いかがお考えですか. 追加発言 鹿児島大 川平和美:認知能向上がADL, 身体能力の改善に差を生まないのは, 能力の向上などの多くの要因が関連しているから. 車の運転が構成行為を含む作業療法のみで向上することが知られており, 認知能向上はADL, 歩行能力等に良い影響を与えていると考える.
ISSN:0034-351X