21. ヒト脂肪組織発現解析を用いた肥満によるインスリン抵抗性メカニズムの検討

〈背景〉2008年4月より, メタボリックシンドロームに立脚した特定健康診査(健診)・特定保健指導が, 医療保険者に義務づけられる. 労働者が定期健康診断・保健指導を受ける際の便宜を図るため, 労働安全衛生規則が改正され, 労働安全衛生法下の定期健康診断が, 腹囲測定等の特定検診項目を含むこととなった. 特定健診はメタボリックシンドロームを中心概念に据えている. メタボリックシンドロームについては新知見が急速に得られつつあるが, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧, 肥満など, いろいろな視点からの疾病発生ならびに進展のメカニズムの解明が必要である. 今回, 脂肪組織の変化に焦点を当てた研究結果を報...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in産業衛生学雑誌 Vol. 50; no. 2; pp. 66 - 67
Main Authors 岡崎由希子, 植木浩二郎, 原一雄, 堀越桃子, 門脇孝, 三好裕司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.03.2008
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:〈背景〉2008年4月より, メタボリックシンドロームに立脚した特定健康診査(健診)・特定保健指導が, 医療保険者に義務づけられる. 労働者が定期健康診断・保健指導を受ける際の便宜を図るため, 労働安全衛生規則が改正され, 労働安全衛生法下の定期健康診断が, 腹囲測定等の特定検診項目を含むこととなった. 特定健診はメタボリックシンドロームを中心概念に据えている. メタボリックシンドロームについては新知見が急速に得られつつあるが, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧, 肥満など, いろいろな視点からの疾病発生ならびに進展のメカニズムの解明が必要である. 今回, 脂肪組織の変化に焦点を当てた研究結果を報告する. 〈目的〉肥満によって引き起こされるメタボリックシンドロームは, 脂肪組織の質的変化が病態の基盤にある. メタボリックシンドロームの根治療法確立のためには, ヒト, 殊に日本人において肥満による脂肪組織の質的変化を解明する必要がある. 〈方法・結果〉正常から軽度肥満の非糖尿病患者65名の皮下脂肪組織を採取し, DNAチップによる網羅的発現プロファイルと患者の臨床データとを統合的に解析した. 非肥満群と肥満群を比較すると, 175遺伝子が2倍以上の発現変化を認め, いくつかのアディポカインについて肥満との相関を認めた. 一方, インスリン抵抗性群でミトコンドリア機能関連遺伝子の発現が全般的に約30%低下していた. 〈考察〉日本人においては軽度肥満の状態からアディポカインの分泌変化が見られ, またインスリン抵抗性群では糖尿病発症以前から脂肪組織におけるミトコンドリア機能の低下を認め, メタボリックシンドロームの病態形成への関与が示唆された.
ISSN:1341-0725