4.当院におけるエラスポール(R)の使用例について

【目的】急性肺障害(ALI), ARDSは現在でもなお死亡率の高い疾患であり, その病態には好中球エラスターゼが深く関与することが明らかになっている. 好中球エラスターゼ阻害剤エラスポール(R)はSIRS(全身性炎症反応症候群)に伴う急性肺障害に対する新規治療薬であり, その効果が期待される. 我々は当院におけるエラスポール使用例の解析を行ったので報告する. 【対象方法】2002年6月~2003年3月まで当院にてエラスポールを使用した入院患者20名(男性13名, 女性7名)につき解析を行った. 肺障害の評価はエラスポール第III相二重盲検試験時と同じMurrayの変法を用い, 投与直前, 終了...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 1; p. 38
Main Authors 堀江健夫, 小林剛, 宇津木光克, 解良恭一, 滝瀬淳, 稲沢正士, 中野実, 小池俊明, 高橋栄治, 奈良岳志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.02.2004
Kitakanto Medical Society
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ISSN1343-2826

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Summary:【目的】急性肺障害(ALI), ARDSは現在でもなお死亡率の高い疾患であり, その病態には好中球エラスターゼが深く関与することが明らかになっている. 好中球エラスターゼ阻害剤エラスポール(R)はSIRS(全身性炎症反応症候群)に伴う急性肺障害に対する新規治療薬であり, その効果が期待される. 我々は当院におけるエラスポール使用例の解析を行ったので報告する. 【対象方法】2002年6月~2003年3月まで当院にてエラスポールを使用した入院患者20名(男性13名, 女性7名)につき解析を行った. 肺障害の評価はエラスポール第III相二重盲検試験時と同じMurrayの変法を用い, 投与直前, 終了時の差で判定した. 【結果】平均年齢は男性60±17歳, 女性62±21歳であり, 全員がSIRSの診断基準を満たしていた. 基礎疾患として感染症50%, 外傷40%, 手術侵襲10%であった. 肺障害の変化に関して, 各評価項目別の解析ではP/F(改善14, 不変2, 悪化4), xp(改善12, 不変7, 悪化1), PEEP(改善13, 不変3, 悪化4)であり, 肺障害スコアでは改善14, 不変4, 悪化2という結果を得た. 人工呼吸器離脱率は90%で平均挿管期間は12.6±7.0日であった. 肺機能改善度は中等度改善以上が70%という成績を得ることができた. この結果はエラスポール第III相試験時におけるH群(エラスポール群)と同等の成績であった. また, 50%人工呼吸器離脱期間(半数の患者が抜管できるまでの期間)は対照群(20日)とくらべ当院成績は12日間と治験と同等の結果を得た. 【結語】当院におけるSIRSに伴う急性肺障害に対するエラスポールの肺機能改善率, 50%人工呼吸器離脱期間, 平均挿管期間は本剤の治験時と同等の結果を得ることができた. 今後さらなる症例の集積を行い, 疾患群における差異などの検討を行いたい.
ISSN:1343-2826