1.S-1とテガフールの低DPD活性ラットにおけるToxicokinetics

【目的】5-FU異化代謝の律速酵素であるdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)には遺伝多型が報告されている. 5-FUの投与で重篤な消化器系や骨髄系の副作用あるいは希に死亡に至る例が報告されており, それらの患者ではDPDが欠損あるいはDPD活性が極端に低く, 5-FUの血中濃度が異常に高いとの結果が示されている. 低DPD患者に5-FU系抗腫瘍剤を投与した後の動態や5-FUの作用について推測するためにはモデル動物が必要と考え, 低DPDラットを作成し5-FU系抗腫瘍剤のToxicokineticsについて検討した. 【方法】ラットにDPDの不可逆的阻害剤であ...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 53; no. 2; p. 227
Main Authors 永山績夫, 池田和正, 山下和正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2003
Kitakanto Medical Society
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ISSN1343-2826

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Summary:【目的】5-FU異化代謝の律速酵素であるdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)には遺伝多型が報告されている. 5-FUの投与で重篤な消化器系や骨髄系の副作用あるいは希に死亡に至る例が報告されており, それらの患者ではDPDが欠損あるいはDPD活性が極端に低く, 5-FUの血中濃度が異常に高いとの結果が示されている. 低DPD患者に5-FU系抗腫瘍剤を投与した後の動態や5-FUの作用について推測するためにはモデル動物が必要と考え, 低DPDラットを作成し5-FU系抗腫瘍剤のToxicokineticsについて検討した. 【方法】ラットにDPDの不可逆的阻害剤である5-bromovinyluracilを50μmol/kgの用量で一日2回経口投与し低DPDラットとした. テガフール(FT)は60mg/kgの用量で5日間投与し, S-1は5mg/kgを同様に投与した. Daylとday5の投与後30分, 1, 4, 8時間に採血し血漿中の5-FU濃度を測定し, 肝ではサイトゾル画分のDPD活性を測定した. またday5の8時間後に空腸を採取し病理組織を作製した. 【結果】低DPDラットにFTを投与した群では5-FUのCmax, AUCはDay5で正常ラットに比べそれぞれ33倍, 45倍と高値を示した. 一方, S-1投与群ではCmax, AUCはそれぞれ1. 4倍, 3倍の値を示した. 低DPDラットにFTを投与した群では空腸粘膜の重度な萎縮が観察され, S-1投与群では粘膜に軽度な萎縮が観察された. 【結語】S-1はDPD阻害剤の配合されてない5-FU系抗腫瘍剤に比べDPD活性の変動している動物に投与した場合, 5-FU暴露量に変動の少ないことが明らかとなった.
ISSN:1343-2826