脊髄後根神経節ニューロンの興奮性に対するI_h チャンネルブロッカーZD7288の作用
〔目的〕心拍緩徐を目的として開発されたZD7288(ゼネカ社)は, 自動能をもつ心筋細胞に見られる過分極誘発内向き電流(I_h ;アイ・エイチ)を抑制する. I_h チャンネルは, 静止膜電位付近から過分極電位の範囲で活性化し, Na^+ とK^+ による内向き電流を起こす. このチャンネルの機能的役割は, 活動電位の再分極により活性化し, 緩徐な脱分極を引き起こすことで活動電位の発火頻度を促進するものと考えられる. 一方, I_h チャンネルは, 心筋細胞以外に脊髄後根神経節(DRG)ニューロンを含む種々のニューロンにも存在し, ニューロンの興奮性の調整に関与することが知られている. 今回の...
Saved in:
Published in | PAIN RESEARCH Vol. 13; no. 3; p. 94 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本疼痛学会
05.12.1998
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-8588 |
Cover
Summary: | 〔目的〕心拍緩徐を目的として開発されたZD7288(ゼネカ社)は, 自動能をもつ心筋細胞に見られる過分極誘発内向き電流(I_h ;アイ・エイチ)を抑制する. I_h チャンネルは, 静止膜電位付近から過分極電位の範囲で活性化し, Na^+ とK^+ による内向き電流を起こす. このチャンネルの機能的役割は, 活動電位の再分極により活性化し, 緩徐な脱分極を引き起こすことで活動電位の発火頻度を促進するものと考えられる. 一方, I_h チャンネルは, 心筋細胞以外に脊髄後根神経節(DRG)ニューロンを含む種々のニューロンにも存在し, ニューロンの興奮性の調整に関与することが知られている. 今回の研究では, ZD7288が, DRGニューロンのI_h と興奮性に及ぼす作用を解析した. 〔方法〕実験には, 新たに開発した「DRG坐骨神経付着標本」を用いた. ネンブタール麻酔下で, SD系雌性ラット(6-10週齢)から, L4またはL5レベルのDRGを坐骨神経を付着したまま摘出した. 直ちに, 標本を酸素飽和人工脳脊髄液に入れ, DRG周囲の結合組織をできるだけ除去した後に, ノマルスキー顕微鏡下でDRGニューロンの細胞体からWhole-cell patch clamp法を用いて記録を行った. 軸索の伝導速度からDRGニューロンをAα/β, Aδ, C-typeに分類し, voltage clampモードで, ZD7288(濃度5-40μM)がI_h に及ぼす作用を解析した. また, current clampモードで, ZD7288がDRGニューロンの膜電位に及ぼす影響を解析した. 〔結果及び考察〕I_h は, voltage clampモードで過分極パルスを与えたとき, 緩徐な内向き電流として, ほとんどのAα/β, Aδ-type, 一部のC-typeのDRGニューロンで観察された. ZD7288は, DRGニューロンのI_h を強く抑制した. また, current clampによる記録では, 静止膜電位はZD7288により過分極し, さらに, 脱分極性電流刺激により誘発される連続放電の発火頻度は減少した. これらの結果から, ZD7288は, 神経損傷後, DRGニューロンの細胞体を起源として発生する自発放電を抑圧する可能性が示唆される. |
---|---|
ISSN: | 0915-8588 |