硬組織の発育形成に関する研究-第5報低Ca食飼育ラット歯槽骨のEPMA分析

【研究目的】硬組織の発育がCaの不足によって抑制されることはよく知られている. しかし, Caの経口摂取量と硬組織, 特に歯の形成量との関係を定量的に検討した報告はみられない. 我々はこれまでに, 低Ca食飼料および標準食飼料にて飼育したラットの象牙質に現われる変化を, テトラサイクリン(以下TC)ラベリング法と共焦点レーザ走査顕微鏡(以下CLSM)およびX線マイクロアナライザー(以下EPMA)を用いて検討し, 象牙質の形成速度および形成量がCaの摂取量により大きな影響を受けていることを報告した. 今回は, EPMAを用いてラット歯槽骨中のCaとP元素の定量分析を行ない, Caの摂取量との関係...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-2; p. 107
Main Authors 伊藤茂樹, 藤井慈貴, 久野知子, 中嶋宏樹, 金田孝之, 小林崇之, 佐藤哲夫, 日垣孝一, 椎名直樹, 音琴淳一, 太田紀雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 05.04.2003
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ISSN0385-0110

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Summary:【研究目的】硬組織の発育がCaの不足によって抑制されることはよく知られている. しかし, Caの経口摂取量と硬組織, 特に歯の形成量との関係を定量的に検討した報告はみられない. 我々はこれまでに, 低Ca食飼料および標準食飼料にて飼育したラットの象牙質に現われる変化を, テトラサイクリン(以下TC)ラベリング法と共焦点レーザ走査顕微鏡(以下CLSM)およびX線マイクロアナライザー(以下EPMA)を用いて検討し, 象牙質の形成速度および形成量がCaの摂取量により大きな影響を受けていることを報告した. 今回は, EPMAを用いてラット歯槽骨中のCaとP元素の定量分析を行ない, Caの摂取量との関係について検討した. 【材料と方法】3週齢Wistar系雄性ラットを低Ca食(Ca0. 02%調整)飼育後標準食(Ca0.5%調整)飼育群(以下実験群1), 標準食飼育後低Ca食飼育群(以下実験群2), 低Ca食のみの飼育群(以下実験群3)および標準食のみの飼育群(以下対照群)の4群に分け1週間飼育の後, TC試薬を体重100g当たり0. 5mgの量で3日おきに計5回腹腔内投与した. 5回目のラベリング剤の投与終了後3日目に屠殺し, 直ちに下顎骨を摘出, 10%中性ホルマリン溶液で固定した. 次に, アルコール脱水系列を用いて脱水後, 2段階のアセトンに1昼夜ずつ浸漬し, Rigolac樹脂に包埋した. 樹脂はRigolac2004およびRigolac70Fを8対2の割合で混合し, 重合促進剤として過酸化ベンゾイルを1%加えたものを用いた. 包埋したラットの右側下顎切歯は歯槽骨辺縁より根端方向へ5mmの位置で歯軸に対し直角に切断, 厚さ約100μmの横断非脱灰研磨標本を作製し, CLSM(LSM-GB200)を用いて観察した. その後, 標本の切削面にカーボン蒸着を施し, EPMA(JEOL, JCXA-733型X線マイクロアナライザー)にて歯槽骨中のCaとP元素の線分析を行なった. 【結果と考察】実験群1においては, 前回報告した象牙質の分析結果と異なり, 飼料変更後の著明な変化は出現せず, 対照群と比較してCaとPの量に差はみられなかった. 実験群2においては, 対照群と比較してCaとPの量はわずかに減少していた. 実験群3においては, 対照群と比較してCaとPの量の明らかな減少がみられた. 象牙質と異なり, 歯槽骨には改造現象があるために実験期間中の変化は記録されにくいが, 実験群1の分析結果から, 飼料変更後は減少していたCaとPの量が回復したと考えられる. 加えて, 実験群2および3の分析結果から, Caの摂取量はラット歯槽骨中のCaとPの量の増減に関与しており, 歯槽骨の形成に多大な影響を与えていることが示唆された.
ISSN:0385-0110