2. タンゴの踊りを介しての脳卒中心身機能の恢復
歯切れの良いリズムの中にも一抹の哀愁をただよわせるタンゴ音楽は, 我国の国民性によくマッチするが, 私は踊り好きの恢復期にある脳卒中患者にこれを適用した. タンゴの基本ステップは, ホールド(組み方)の関係から平衡機能維持促進に良いし, 色々な自然肢位(姿勢反射)の中に駆幹のしぼり(ねぢり)を加えるので, 四肢の優位性に程度の違いが出て共同運動からの分離の可能性が出てくる. この音楽は自然界のもっとも基本的な2/4拍子で, アクセントの強調による休止(レスト)や切分音(シンコペーション)がリズムの個性化を作り出し, 身体の力性, 安全性を増す. この踊りは腰部から上を真直ぐに, 肩の線は上下に...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 20; no. 6; p. 364 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.11.1983
社団法人日本リハビリテーション医学会 The Japanese Association of Rehabilitation Medicine |
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 歯切れの良いリズムの中にも一抹の哀愁をただよわせるタンゴ音楽は, 我国の国民性によくマッチするが, 私は踊り好きの恢復期にある脳卒中患者にこれを適用した. タンゴの基本ステップは, ホールド(組み方)の関係から平衡機能維持促進に良いし, 色々な自然肢位(姿勢反射)の中に駆幹のしぼり(ねぢり)を加えるので, 四肢の優位性に程度の違いが出て共同運動からの分離の可能性が出てくる. この音楽は自然界のもっとも基本的な2/4拍子で, アクセントの強調による休止(レスト)や切分音(シンコペーション)がリズムの個性化を作り出し, 身体の力性, 安全性を増す. この踊りは腰部から上を真直ぐに, 肩の線は上下に動かさない前進運動で, 意識しなくても身体の回旋移動が可能で, 歩行初期の運動促進に適応しやすい. 又ホールドやフィガーの性質の関係から踵からボールへとフラットに移り, 足の外側, 内側の使用は, 尖足と内反及び外反足の矯正に役立つものである. 只でさえも閉鎖的になりやすい脳卒中患者が, 数十年来の趣味習慣であったタンゴの踊りを復活実行し, これを機会に社会生活への意欲が漲り, 一般理学療法と供用した結果, 体幹や四肢の関節運動, 筋力恢復に, ひいては性格の変容にもつながったので, 種々のテストを基本に報告する. 質問 鹿児島大学第3内科 中島 洋明: (1)対象例に, 半側空間失認の例は含まれているか. (2)タンゴのステップをふませる場合, 音楽を流した場合とそうでない場合とで, ステップのパターンに差がみられたか. 答 野村 敏彰: (1)については半側視空間失認の患者は予め加えなかった. (2)については, なお初期の訓練であり, 号令によるものよりも簡単な指示を1つないし2つ精々3つ位を与えて組み合わせて行なったものである. |
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ISSN: | 0034-351X |