組織抗酸菌染色による表皮・皮膚付属器および脈管上皮内のMycobacterium lepraeの観察

琉球大学附属病院皮膚科外来で経験したlepromatous leprosy(LL)の組織抗酸菌染色標本の検鏡でMycobacterium lepraeが表皮の角層, 鱗屑や基底層および有棘層などの表皮細胞内に観察され, さらに表皮内汗管細胞や内, 外毛根鞘など皮膚付属器内, 末梢脈管内皮細胞内にもsolidを含む抗酸菌要素が観察された. 昭和57年~平成9年に当科を受診した139症例のうち84症例(215標本)の連続切片の抗酸菌染色染色標本で再検討を行った. その結果LL6症例, borderline lepromatous leprosy(BL)3症例, mid-borderline lep...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 67; no. 1; p. 53
Main Authors 細川篤, Khaskhely Noor Nohammad, 丸野元美, 高宮城敦, 上里博, 野中薫雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 31.03.1998
Online AccessGet full text
ISSN1342-3681

Cover

More Information
Summary:琉球大学附属病院皮膚科外来で経験したlepromatous leprosy(LL)の組織抗酸菌染色標本の検鏡でMycobacterium lepraeが表皮の角層, 鱗屑や基底層および有棘層などの表皮細胞内に観察され, さらに表皮内汗管細胞や内, 外毛根鞘など皮膚付属器内, 末梢脈管内皮細胞内にもsolidを含む抗酸菌要素が観察された. 昭和57年~平成9年に当科を受診した139症例のうち84症例(215標本)の連続切片の抗酸菌染色染色標本で再検討を行った. その結果LL6症例, borderline lepromatous leprosy(BL)3症例, mid-borderline leprosy(BB)1症例, 合計10症例(27標本)において上記部位に抗酸菌要素が見られた(27/215, 12.6%). この27標本のうち12標本で表皮内に(12/27, 44.4%), 12標本で汗腺系に(12/27, 44.4%), 12標本で毛包系に(12/27, 44.4%), 17標本で脈管系に(17/27, 62.9%)菌要素が観察された. その他, LLの鼠径リンパ節2標本に菌要素が観察された. 表皮内抗酸菌陽性12標本中9標本で角層内陽性(9/12, 75.0%)であった. なおLLでは表皮内陽性10標本中9標本で角層内菌陽性であり, BLの2標本は基底層のみ陽性であった. また汗腺系内陽性12標本中10標本で表皮内陽性(10/12, 83.3%)であり, この10標本中5標本では表皮内抗酸菌は明らかに表皮内汗管に隣接した部位に観察された. 従って表皮内の抗酸菌は表皮基底細胞, 汗管の表皮侵入部位の基底細胞や汗腺などから取り込まれた可能性が考えられた. これらの観察からLLやBLなどの多菌型では皮膚付属器を含む経表皮性の排菌の可能性があり, また病原菌は病巣から血行性に皮膚を含む諸臓器に運ばれるものと考えられた. 病原菌の生存活性は明かでないが経表皮, 経汗管, 経毛包性にも排泄され, 落屑や汗, 毛髪や皮脂および爪などに付着した形でも伝播する可能性が推測された. また脈管内皮細胞内やリンパ節にも治療開始後も長期間にわたり菌要素が観察され(治療886日目, 1296日目)LLなどの多薗型では菌血症の状態であり全身諸臓器に於ける菌要素の存在が考えられた. また皮膚症状では脂漏性皮膚炎様の淡紅色斑やleprosy reaction時の結節性紅斑様皮疹で表皮内など上記部位に菌要素が観察されることが多い傾向が見られた. M. lepraeは至適条件下では生体外でも約1ヵ月間生存することが知られており, 濃厚流行地の有病率低下のためにはWHOの多剤併用療法によるLLなどの多菌型の早期治療と共に, 住民や患者家族など接触者のレプロミンテスト陰性者や乳幼児に対するリファンピシンやジアフェニルスルフォンなどの予防的内服療法が有効ではないかと推測された.
ISSN:1342-3681