らい菌rpoT遺伝子の多型性とその地理的分布 II.韓国, 中国におけるそれぞれの型の分布

目的 遺伝子多型に基づくらい菌の型別を意図して, 由来を異にするらい菌の遺伝子を比較した結果, らい菌のrpoT遺伝子中に6塩基からなる直列配列を3個持つものと(3型), 4個(4型)持つものとがあることが明らかとなった. 国内, 国外におけるそれぞれの型の分布の様子から, 日本に分布するらい菌は現代の日本人が形成された過程, 即ち二重構造モデルと一致したものであることが推察された. 4型は朝鮮半島を経由して日本に渡来した民族即ち, 弥生人と共に本州を中心に広まり, 一方3型は縄文人とともに東南アジアに由来するらい菌が沖縄を中心に分布したと考えられた. このことを検証する目的で韓国, 中国なら...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 69; no. 1; p. 33
Main Authors 松岡正典, 前田伸司, 甲斐雅規, 中田登, 川津邦雄, 柏原嘉子, Gue-Tae Chae, Yin Yue-Ping, Wu Qinxue, Abraham T. Agdamag
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.03.2000
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Summary:目的 遺伝子多型に基づくらい菌の型別を意図して, 由来を異にするらい菌の遺伝子を比較した結果, らい菌のrpoT遺伝子中に6塩基からなる直列配列を3個持つものと(3型), 4個(4型)持つものとがあることが明らかとなった. 国内, 国外におけるそれぞれの型の分布の様子から, 日本に分布するらい菌は現代の日本人が形成された過程, 即ち二重構造モデルと一致したものであることが推察された. 4型は朝鮮半島を経由して日本に渡来した民族即ち, 弥生人と共に本州を中心に広まり, 一方3型は縄文人とともに東南アジアに由来するらい菌が沖縄を中心に分布したと考えられた. このことを検証する目的で韓国, 中国ならびにフィリピンより, 更に多数の材料を収集し, その遺伝子型を調べた. 材料および方法 韓国からは73例, 中国からは46検体, フィリピンからは28検体を得た. いずれもパラフィンブロックあるいは耳朶のskin scraped材料よりDNAを調整した. パラフィンブロックはDEXPAD(TAKARA)により処理してTemplate DNAとし, skin scraped材料はメス替刃を70%エタノールに浸漬して保存し, 遠心操作によりらい菌を部分精清後, Proteinase KおよびTween80含有lysis bufferによってTemplate DNAを調製した. 多型性を示す部位が増幅されるPrimerを用いてPCRを行った. 4%Metaphor agaroseにより91bpあるいは97bpのPCR産物の比較をし, さらにBigDye Terminator Cycle Sequencing Reaction kitにより塩基配列を決定して多型性を比較した. 結果および考察 いずれのものも3型, 4型が見られたが, 韓国より得たらい菌は4型が大多数を占め, 中国からのものは3型がやや多かったが, 北西地方では4型の頻度が高かった. フィリピンより得たものの型はほとんどが3型であった. これらの結果は, 日本に分布する4型が韓国由来であることを強く示唆していた. Helicobacter pyroliについても韓国から分離されるものは日本で分離されるものと遺伝子の相同性が高いことが報告されており, らい菌の極めて特徴ある分布が示されたこととH. pyroliにおいて観察された結果とは基を一にするものであると考えられた.
ISSN:1342-3681