急性心不全患者に対する急性期心臓リハビリテーションの検討

【はじめに】現在, 心疾患リハビリテーション(心リハ)料は急性冠動脈症候群(ACS)と開心術(OPE)後の心疾患患者のみに診療報酬請求が認められている. しかし, 心疾患患者を扱っている多くの病院では集中治療室や循環器病棟において, 急性心不全(CHF)の患者も混在して心リハが行われている. そこで今回は, CHF患者に対する急性期心リハの効果に差違があるのかを判定するため, 心リハ料適応疾患群とCHF患者群に対して心リハの到達度や心リハ期間の相違について統計学的に検討を加えて考察する. 【対象】1999年1月から2002年9月までの3年9ヶ月間に当院循環器センターに入院し心リハを行った109...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 16
Main Authors 田畑稔, 中川晋, 宇井進, 木村満, 廣谷隆, 新井保久, 松本徹, 河野円士, 瀬城亜也子, 本山歩, 家護谷知子, 今井智也, 遠藤雅枝, 竹中杏奈, 根本順子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】現在, 心疾患リハビリテーション(心リハ)料は急性冠動脈症候群(ACS)と開心術(OPE)後の心疾患患者のみに診療報酬請求が認められている. しかし, 心疾患患者を扱っている多くの病院では集中治療室や循環器病棟において, 急性心不全(CHF)の患者も混在して心リハが行われている. そこで今回は, CHF患者に対する急性期心リハの効果に差違があるのかを判定するため, 心リハ料適応疾患群とCHF患者群に対して心リハの到達度や心リハ期間の相違について統計学的に検討を加えて考察する. 【対象】1999年1月から2002年9月までの3年9ヶ月間に当院循環器センターに入院し心リハを行った1092例(男性756例, 女性336例)(平均年齢67.4±11.9歳)を対象とした. 【方法】対象群をACS群436例(男性310例, 女性126例)(平均年齢67.4±11.4歳), OPE群276例(男性202例, 女性74例)(平均年齢64.8±9.6歳), CHF群380例(男性244例, 女性136例)(平均年齢70.9±11.8歳)に分け, さらにCHF群は起因(不整脈群48例, 冠動脈群95例, 腎不全群12例, 心筋症群144例, 弁膜症群81例)ごとに分類した. 心リハ到達度については負荷試験可能群(A群)階段昇降可能群(B群)病棟内歩行可能群(C群)身辺動作可能群(D群)院内死亡群(S群)に分類した. 検定方法は, 各心疾患群間とCHF群は起因ごとに, 心リハ到達度及び平均心リハ期間についてx2検定及び分散分析を用いて検討した. 【結果】心疾患群間の心リハ期間はACS群14.9±14.3日, CHF群20.6±19.5日, OPE群31.1±31.8日であり, 各々に有意差(P<0.001)を認めた. 心リハ到達度はACS群(A群279例, B群36例, C群98例, D群17例, S群6例)CHF群(A群145例, B群51例, C群164例, D群16例, S群4例)OPE群(A群221例, B群13例, C群33例, D群7例, S群2例)x2=129.6で有意差(P<0.0001)を認めた. また, CHFの起因別による心リハ期間は不整脈群18.7±12.8日, 冠動脈群19.6±16.1日, 腎不全群28.4±25.3日, 心筋症群21.6±22.7日, 弁膜症群19.9±19.7日であり, 有意差を認めなかった. 心リハ到達度は不整脈群(A群18例, B群4例, C群21例, D群2例, S群3例)冠動脈群(A群33例, B群11例, C群46例, D群5例, S群0例)腎不全群(A群5例, B群0例, C群7例, D群0例, S群0例)心筋症群(A群66例, B群22例, C群52例, D群4例, S群0例)弁膜症群(A群23例, B群14例, C群38例, D群5例, S群例)x2=28.9で有意差(P<0.05)を認めた. 【考察】既知の通りCHF患者は病前から運動耐用能が低下しているため, 心リハ料適応群と比べると急性期心リハの到達度に差を認めるものの心リハ期間はOPE群より短期間に急性期心リハを終了可能なことが判明した. また, CHFの起因による心リハ期間に差はないが, 心リハ到達度は若干の差を認めたが, 心リハ期間からみた急性期心リハの効果はCHF患者においても相違ないものと考える.
ISSN:0289-3770