心筋のイオンチャネルの研究史から

心電図のもとをなす心筋の活動電位は主にチャネルの開閉で生ずる膜電流で形成される. 従って, チャネルに関する情報は心電学の一つの基礎である. 私は1968年にHeidelbergのWolfgang Trautwein教授の下に留学して以来, 心筋の電気生理学に取り組んできた. 日本人として最初に心筋の膜電流を報告したことになるかもしれない. この機会に, これまでの膜電流研究を振り返り, 今を考えたい. 心筋のNa電流やK電流は, 1960年代前半にW.Trautwein教授らによってヒツジのプルキンエ線維から記録された. 1960年代後半はCaスパイクすなわち活動電位へのCa電流の寄与が注目...

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Published in心電図 Vol. 17; no. 3; p. 217
Main Author 大地陸男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心電学会 25.05.1997
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Summary:心電図のもとをなす心筋の活動電位は主にチャネルの開閉で生ずる膜電流で形成される. 従って, チャネルに関する情報は心電学の一つの基礎である. 私は1968年にHeidelbergのWolfgang Trautwein教授の下に留学して以来, 心筋の電気生理学に取り組んできた. 日本人として最初に心筋の膜電流を報告したことになるかもしれない. この機会に, これまでの膜電流研究を振り返り, 今を考えたい. 心筋のNa電流やK電流は, 1960年代前半にW.Trautwein教授らによってヒツジのプルキンエ線維から記録された. 1960年代後半はCaスパイクすなわち活動電位へのCa電流の寄与が注目を浴びており, 私が実験を開始した頃は心筋のCa電流はまだ報告されていなかった. Heidelbergでは単一スクロースギャップ法で, 肉柱筋や乳頭筋の先端部をvoltage clampすることが可能になっていた. 結局モルモットの心室筋を世界で初めてvoltage clampに使用して, 遅い内向き電流と時間依存性の外向き電流とを報告した(Pflugers Arch. 316:81-94, 1970). 遅い内向き電流は現在のL型 Ca電流に, また時間依存性外向き電流は電位依存性K電流(IKs)に相当する. この研究ではMn2+がCaチャネルを透過するという発見もあった.
ISSN:0285-1660