19.肝移植術前診断に苦慮した多発肝腫瘍の1例
【背景】生体肝臓移植の適応は現在広がり, 肝腫瘍に対する治療法として認められている. また, 免疫寛容を誘導するのにドナーの骨髄を術前移入する方法は多くの実験的成果をあげている. 今回, 我々は臨床例で慢性骨髄性白血病(CML)に対し10年前に妹から骨髄移植(BMT)を受け経過観察中, 多発性の肝腫瘍を指摘され, 骨髄と同じ肝臓のドナーを用いた生体肝移植を希望する症例を経験したので文献的考察と併せて報告する. 【症例】34歳女性【現病歴】H3年CMLに対しBMTを受けていた. その際大量輸血を受けHCV陽性となった. H14年CTにて多発肝腫瘍を指摘され, 生体肝移植目的にて当科紹介. 【術前...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 1; p. 54 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.02.2004
Kitakanto Medical Society |
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ISSN | 1343-2826 |
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Summary: | 【背景】生体肝臓移植の適応は現在広がり, 肝腫瘍に対する治療法として認められている. また, 免疫寛容を誘導するのにドナーの骨髄を術前移入する方法は多くの実験的成果をあげている. 今回, 我々は臨床例で慢性骨髄性白血病(CML)に対し10年前に妹から骨髄移植(BMT)を受け経過観察中, 多発性の肝腫瘍を指摘され, 骨髄と同じ肝臓のドナーを用いた生体肝移植を希望する症例を経験したので文献的考察と併せて報告する. 【症例】34歳女性【現病歴】H3年CMLに対しBMTを受けていた. その際大量輸血を受けHCV陽性となった. H14年CTにて多発肝腫瘍を指摘され, 生体肝移植目的にて当科紹介. 【術前検査】Alb 3.8g/dl, T-Bil 0.2mg/dl, ALT40U/L, PT117%, AFP2.3/ml, PIVKA 14mAU/ml, HCV Ab(+), 肝ダイナミックCTにて動脈相で濃染する腫瘤性病変を4(5mm), S5(8mm), S7(2cm), S8(1cm)に認めた. S7よ【手術】H14年7月8日に生体肝移植を予定し, まず, S7の肝臓部分切除を行った. 術中迅速病理でAdenomaの診断を得, 現在, CTにて残存する腫瘍を経過観察しているが, 若干AFP, PIVKAの上昇を認めている. 【結語】切除不能な良性腫瘍(Adenomatosis等)についても肝移植は行われているが, その適応は肝癌とは異なっている. 肝臓癌と画像, 病理的にも鑑別に苦慮する事があるが肝移植の適応は厳格にしなければならないと考える. 今回の術前検査ではドナーに対する不応答性も獲得しており, 術後免疫抑制剤を投与する必要がなく腫瘍に対する肝移植として良い適応と思われた. このような症例で得られた知見は今後, 待機例で免疫寛容を誘導するのにドナーの骨髄を移植する方法の一助になると思われた. |
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ISSN: | 1343-2826 |