11.透析患者のペインクリニック
透析に合併した代謝性骨病変による疼痛を呈す3疾患をとりあげ, その特殊性, 治療方針について我々の見解を述べる. (1)骨痛:透析患者では, 高P低Ca血症, 1.25(OH)2D3の低下を基礎にもち, 二次性副甲状腺機能亢進症を合併するが, これに伴う膝痛, 腰背部痛を訴えることが多い. X線上は, 疼痛部の骨所見に乏しいが, 示指中節骨橈側での骨膜下吸収, 歯槽硬線の消失等の副甲状腺機能亢進症の骨所見はとらえやすく, 骨生検により線維性骨炎像を認めることが多い. 1α(OH)D3等に反応しない例では, 腫大化した副甲状腺の摘出術を考慮しなければならない. (2)異所性石灰沈着:血中Ca×P...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 21; no. 6; p. 425 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.01.1984
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Summary: | 透析に合併した代謝性骨病変による疼痛を呈す3疾患をとりあげ, その特殊性, 治療方針について我々の見解を述べる. (1)骨痛:透析患者では, 高P低Ca血症, 1.25(OH)2D3の低下を基礎にもち, 二次性副甲状腺機能亢進症を合併するが, これに伴う膝痛, 腰背部痛を訴えることが多い. X線上は, 疼痛部の骨所見に乏しいが, 示指中節骨橈側での骨膜下吸収, 歯槽硬線の消失等の副甲状腺機能亢進症の骨所見はとらえやすく, 骨生検により線維性骨炎像を認めることが多い. 1α(OH)D3等に反応しない例では, 腫大化した副甲状腺の摘出術を考慮しなければならない. (2)異所性石灰沈着:血中Ca×P積が70を越える患者では, 関節痛を伴う異所性石灰沈着をきたしやすく, 腫瘤状に鶏卵大となったものでは, 骨肉腫との鑑別を要することさえある. 診断には, X線の他, シンチグラフィーが有用である. Pキレート剤の内服は, Ca×P積を下げ, 腫瘤の縮小化をもたらすが, 観血的摘出術を要することも多い. (3)高Al血症と骨軟化症:透析液中Al含有およびPキレート剤としてのAl剤内服から, 透析患者の血中Al濃度は, 正常人の10倍にも達するが, 近年, Alによる骨軟化症のために, 骨痛, 骨折をきたす例が報告されている. X線上, Looser's zone, 多発性骨折を認め, 高Al血症を呈していることから臨床診断される. 治療は, 透析液中Al濃度を低下させて予防する以外, 積極的方法は, 現在のところない. 質問 登戸クリニック 友広忠彬:(1)Secodary hyperparathyroidismに対するカルシトニン製剤の有効性はいかがですか. (2)Ca×P積低下を目的としてPキレート剤を投与しますが, 高Al血症による骨軟化症との関係は?特にいずれを重視したらよろしいでしょうか. (3)自験例ですが, 多発性肋骨骨折をきたす症例がおります. 種々の原因が考えられるでしょうが, やはり高Al血症が疑わしいでしょうか. 答 村岡幹夫:1α(OH)D3をはじめカルシトニン投与も含む内科的治療は続けているが, カルシトニンが特に有効であるという印象はない. 腫大化した副甲状腺の摘出術が, 最終的に有効だった例として今回, 報告した. (2)Al剤内服患者で確かに血中Al濃度は上昇しているが, それが即Al剤を投与しないことにはならない. 逆浸透圧装置を使用し透析液中Al濃度を下げることに留意している. (3)副甲状腺機能亢進症の有無の他, 骨軟化症を疑わせるX線所見(Looser's zone), 血中Al濃度等の検索が必要だが, 疑う必要は大きい. |
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ISSN: | 0034-351X |