痕跡調査とカメラトラップ調査に基づく富山県における特定外来生物アライグマ (Procyon lotor) の生息状況
「摘要」特定外来生物のアライグマ (Procyon lotor) は, 生態系や営農活動に大きな影響を与えるため, 防除の対象とされている. アライグマ防除のためには, 地域における侵入や定着の状況に応じた対策が必要であり, そのための生息状況の把握が不可欠である. 富山県において, 近年アライグマの報告事例が増えつつある一方, 網羅的な調査は行われておらず, 侵入や定着の状況は不明である. そこで本研究は, 富山県におけるアライグマの生息状況を把握することを目的として, 県内全域における痕跡調査を行った. その結果, 東西県境付近を中心に94地点でアライグマの爪痕を発見し, 全調査地点に対す...
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Published in | 哺乳類科学 Vol. 62; no. 2; pp. 247 - 255 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本哺乳類学会
31.07.2022
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ISSN | 0385-437X |
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Summary: | 「摘要」特定外来生物のアライグマ (Procyon lotor) は, 生態系や営農活動に大きな影響を与えるため, 防除の対象とされている. アライグマ防除のためには, 地域における侵入や定着の状況に応じた対策が必要であり, そのための生息状況の把握が不可欠である. 富山県において, 近年アライグマの報告事例が増えつつある一方, 網羅的な調査は行われておらず, 侵入や定着の状況は不明である. そこで本研究は, 富山県におけるアライグマの生息状況を把握することを目的として, 県内全域における痕跡調査を行った. その結果, 東西県境付近を中心に94地点でアライグマの爪痕を発見し, 全調査地点に対する痕跡確認率は48.7%であった. また, これまで多数の個体が確認されている県北西部の氷見市におけるカメラトラップ調査を行った. その結果, 氷見市稲積地区において1個体を撮影し, 撮影までに要した期間は76日であった. 以上の結果は, 既に多数の個体数が生息する他の都道府県と比べて, 富山県における低い生息密度を示唆している. また富山県内において, 地域ごとの生息状況が異なり, 東西県境地域は侵入初期段階, 県中央地域は未侵入段階であると判断され, それぞれの状況に応じた防除の取り組みが必要であると考えられる. |
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ISSN: | 0385-437X |