教育心理学における数理モデルの展開と応用可能性 - 理論と構成概念の再評価, 教育事象と実践のより深い理解へ

「1. はじめに」私たちをとりまく世界は非常に複雑で, より簡略化された「モデル」として理解されることが多い. モデルとは, 「科学者が関心をもつ対象の潜在的な表現(Weisberg, 2013 松王訳 2017, p.270)」とされ, モデリングは「モデルの構築や分析を通じて, 現実世界を間接的に研究する手法(Weisberg, 2013 松王訳 2017, p.5)」とされている. こうしたモデルの発想は多くの学問領域の発展を支えてきたものであり, 数理モデルに基づいて現象や人間の理解をめざす計算論的神経科学や計算論的精神医学といった研究領域の発展もめざましい(国里・片平・沖村・山下,...

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Published in行動計量学 Vol. 49; no. 2; pp. 113 - 130
Main Author 赤松大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本行動計量学会 30.09.2022
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ISSN0385-5481

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Summary:「1. はじめに」私たちをとりまく世界は非常に複雑で, より簡略化された「モデル」として理解されることが多い. モデルとは, 「科学者が関心をもつ対象の潜在的な表現(Weisberg, 2013 松王訳 2017, p.270)」とされ, モデリングは「モデルの構築や分析を通じて, 現実世界を間接的に研究する手法(Weisberg, 2013 松王訳 2017, p.5)」とされている. こうしたモデルの発想は多くの学問領域の発展を支えてきたものであり, 数理モデルに基づいて現象や人間の理解をめざす計算論的神経科学や計算論的精神医学といった研究領域の発展もめざましい(国里・片平・沖村・山下, 2019;田中, 2019). 心理学もその例外ではない. Farrell & Lewandowsky (2010)は, Current Directions in Psychological Science誌に"Computational models as aids to better reasoning in psychology"という展望論文を発表し, それを端緒として心理学でも数理モデルに関連する論文が増加している(e.g., Vancouver & Purl, 2017).
ISSN:0385-5481