STRA6多型と黒毛和種枝肉形質との関連
「要約」STRA6はビタミンA(VA)の一種であるレチノールとRBP4の複合体に対する細胞膜受容体であり, 細胞のVA取り込みを促進している. VAは脂肪細胞分化抑制を始めとする様々な生理作用を持ち, 黒毛和種の肥育は脂肪交雑を高めるために, 肥育中期にVA給与を制限して行われている. これらのことから, STRA6遺伝子の多型は脂肪交雑を始めとする枝肉形質に影響する可能性がある. そこで, 黒毛和種におけるSTRA6多型を探索したところ, 7種のSNPsが検出された. これらのうち, アミノ酸置換を伴うものはc.866A>G (p.Q289R)のみであったことから, このSNPの型判定...
Saved in:
Published in | 動物遺伝育種研究 Vol. 48; no. 2; pp. 7 - 12 |
---|---|
Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本動物遺伝育種学会
24.08.2020
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-9961 |
Cover
Summary: | 「要約」STRA6はビタミンA(VA)の一種であるレチノールとRBP4の複合体に対する細胞膜受容体であり, 細胞のVA取り込みを促進している. VAは脂肪細胞分化抑制を始めとする様々な生理作用を持ち, 黒毛和種の肥育は脂肪交雑を高めるために, 肥育中期にVA給与を制限して行われている. これらのことから, STRA6遺伝子の多型は脂肪交雑を始めとする枝肉形質に影響する可能性がある. そこで, 黒毛和種におけるSTRA6多型を探索したところ, 7種のSNPsが検出された. これらのうち, アミノ酸置換を伴うものはc.866A>G (p.Q289R)のみであったことから, このSNPの型判定を肥育去勢牛集団1,235頭について行い, 各種枝肉形質との関連を解析した. その結果, G/G型のBMSがA/A型とA/G型よりも有意に高いことが示された(p<0.05). さらに, 個体間の遺伝的背景をなるべく均等にするために, 1,235頭からA/A型個体とその半きょうだい個体を選抜し(n=150), BMSとの関連を解析したところ, 同様にG/G型が他の遺伝子型よりも有意に高いことが示された(p=0.05). STRA6 p.Q289RはVA輸送孔周辺に位置し, アミノ酸置換がVA輸送を妨げることが示されているアミノ酸残基に隣接している. このことから, c.866A>G (p.Q289R)はウシの生理機能を著しく損なわない範囲でSTRA6の機能を低下させ, 脂肪細胞分化を促進させることで脂肪交雑形成を向上させることが示唆された. |
---|---|
ISSN: | 1345-9961 |