日本の動物園における1950年から2022年までに発生した動物による死傷事故の定量的評価

「要約」動物園動物によるヒトの死傷事故は甚大な被害をもたらすが, 正確な事故件数すら把握されていない. そこで本研究は安全対策に資するべく, 国内の動物園で発生した動物によるヒトの死傷事故を定量的に評価した. 5つの新聞記事データベースを用いて, 約72年分の記事から加害動物, 発生時の行為などを調査した. その結果, 54園で発生した107件122人分(死亡25人, 重傷50人, 軽傷39人, 不明8人)の事故を確認した. 飼育員の事故原因はゾウ科の同室内作業やネコ科の扉操作が多く, 近年も増加傾向にあった. 来園者の事故原因はクマ科などの獣舎への侵入がほぼ全てを占めていたが, 2000年代...

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Published inAnimal Behaviour and Management Vol. 58; no. 4; pp. 194 - 203
Main Authors 伴和幸, 野上大史, 高見一利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 動物の行動と管理学会 25.12.2022
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ISSN1880-2133

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Summary:「要約」動物園動物によるヒトの死傷事故は甚大な被害をもたらすが, 正確な事故件数すら把握されていない. そこで本研究は安全対策に資するべく, 国内の動物園で発生した動物によるヒトの死傷事故を定量的に評価した. 5つの新聞記事データベースを用いて, 約72年分の記事から加害動物, 発生時の行為などを調査した. その結果, 54園で発生した107件122人分(死亡25人, 重傷50人, 軽傷39人, 不明8人)の事故を確認した. 飼育員の事故原因はゾウ科の同室内作業やネコ科の扉操作が多く, 近年も増加傾向にあった. 来園者の事故原因はクマ科などの獣舎への侵入がほぼ全てを占めていたが, 2000年代以降0件であった. ゾウ科の飼育管理は直接飼育から準間接飼育へと切り替えが行われており, 事故の減少が予想される. 以上より, 今後動物園動物によるヒトの死傷事故を減少させるには, ネコ科の扉操作による事故の安全管理システムの再構築が必要である.
ISSN:1880-2133