2.距骨外側突起骨折2例の治療経験

【はじめに】距骨外側突起骨折は見逃される症例が少なくない. 10年ほど前は国内で数例の報告しかなかったが, 最近ではスノーボードによる本骨折の報告を散見する. 今回我々は距骨外側突起骨折の2例に観血的治療を行い良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例1】32歳男性平成14年9月20日軽自動車にて前にいた犬を避けようとして電柱に衝突し受傷. 右足関節外果下部に腫脹圧痛が存在し, 単純Xpにて右距骨外側突起骨折距骨後突起骨折を認めた. 平成14年9月25日前者に対し観血的整復固定術を施行, 後者は保存療法とした. 術後2週にて歩行用ギブスにて加重開始, 術後3週にてギブスシャー...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 4; pp. 331 - 332
Main Authors 金子哲也, 小林史明, 荻原哲夫, 長田純一, 徳間健太郎, 佐藤貴久, 割田敏朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.11.2004
Kitakanto Medical Society
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ISSN1343-2826

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Summary:【はじめに】距骨外側突起骨折は見逃される症例が少なくない. 10年ほど前は国内で数例の報告しかなかったが, 最近ではスノーボードによる本骨折の報告を散見する. 今回我々は距骨外側突起骨折の2例に観血的治療を行い良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例1】32歳男性平成14年9月20日軽自動車にて前にいた犬を避けようとして電柱に衝突し受傷. 右足関節外果下部に腫脹圧痛が存在し, 単純Xpにて右距骨外側突起骨折距骨後突起骨折を認めた. 平成14年9月25日前者に対し観血的整復固定術を施行, 後者は保存療法とした. 術後2週にて歩行用ギブスにて加重開始, 術後3週にてギブスシャーレ~軟性装具装着下に可動域訓練を開始した. 術後半年にて骨癒合は良好, 同部の疼痛ADL上の支障なく経過良好である. 【症例2】64歳女性平成13年10月31日自転車にて横断歩道を走行中に右折しようとした乗用車にぶつかり受傷. はっきりとした受傷肢位は覚えていない. 右足関節に発赤腫脹ははっきりとしなかつたが, 右足関節背屈にて疼痛あり. 単純XpCTにて右距骨外側突起骨折を認めた. 平成13年11月5日観血的整復固定術を施行した. 術後3週にて歩行用ギプスにて加重開始, 可動域訓練を開始した. 術後6ヶ月にて骨癒合は良好, ADL上の支障はない. 【考察】距骨外側突起骨折は足関節捻挫として見逃されることも多く, Mukherjeeは1500例の足関節捻挫骨折のうち0.86%に距骨外側突起骨折を認めたと報告している. Bohayらは見逃されたり, 正確な診断がつかないまま治療を受けていて長期間足関節の疼痛や腫脹, 痺れ感が軽快せずCTでのみ距骨下部骨折の診断がついた4例を報告している. 今回の症例2では単純Xpにて骨折の正確な診断は難しく症状から本骨折を疑って単純Xpを読影し, CTにて確定診断をつけることができた. 距骨外側突起骨折の発生機序については諸説ある. HawkinsやFjeldborgらは外側距踵靱帯は細いため剥離骨折を生じさせるほど強くないとし, 足関節の内返しと背屈力にて本骨折が生じるとしているが, 最近の報告では足関節の外反によるものとする意見もある. Hawkinsは本骨折を3つに分類し, 転位のないもの以外は観血的治療を勧めている. 今回の症例では症例1はXpでは転位の判断が難しかったが早期の社会復帰を希望されていたため手術を施行した. 症例2は骨片の転位があり, 何らかの固定が必要と考え観血的整復固定術を選択した. 本骨折はスノーボードの普及に伴い頻度も増加しているものと思われる. 放置例は距骨下関節の疼痛を残し, 早期に変形性関節症をきたすことも多いため, 足関節の捻挫の際には本骨折も念頭に置き診察する必要がある. その際には通常の足関節正面X線像より軽度底屈内反した肢位による撮影や断層撮影CT等を施行し本骨折の有無につき検討することが重要である.
ISSN:1343-2826