Drosophilaグライコーム:ショウジョウバエを用いた糖鎖機能解析へのアプローチ

ヒトのゲノム配列の決定に終了宣言が出され, 現在, その情報をもとに合成されるタンパク質に関する研究, プロテオーム研究が盛んに行われている. 合成されたタンパク質はゴルジ装置で糖転移酵素により順次糖を付加され, 様々な糖鎖修飾を受けた後細胞外へ分泌, 或いは, 細胞膜上に提示される. 細胞表面にあるタンパク質の半数以上は, 糖鎖修飾をうけた糖タンパク質であり, 糖鎖修飾を考えずにタンパク質の機能は語れない. 細胞表面の糖タンパク質や糖脂質上の糖鎖構造は, 生物の発生過程や細胞の癌化において顕著な変化を示し, 糖鎖は細胞の顔となっている. 筋ジストロフィーにおけるO-マンノース型糖鎖異常や癌関...

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Published in生物物理化学 Vol. 48; no. 1; pp. 19 - 24
Main Author 西原祥子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本電気泳動学会 2004
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Summary:ヒトのゲノム配列の決定に終了宣言が出され, 現在, その情報をもとに合成されるタンパク質に関する研究, プロテオーム研究が盛んに行われている. 合成されたタンパク質はゴルジ装置で糖転移酵素により順次糖を付加され, 様々な糖鎖修飾を受けた後細胞外へ分泌, 或いは, 細胞膜上に提示される. 細胞表面にあるタンパク質の半数以上は, 糖鎖修飾をうけた糖タンパク質であり, 糖鎖修飾を考えずにタンパク質の機能は語れない. 細胞表面の糖タンパク質や糖脂質上の糖鎖構造は, 生物の発生過程や細胞の癌化において顕著な変化を示し, 糖鎖は細胞の顔となっている. 筋ジストロフィーにおけるO-マンノース型糖鎖異常や癌関連の数々の研究から, ヒト疾病においても糖鎖が重要な役割を果していることは明らかである. しかし, 糖鎖の複雑性に由来して, その全容の解明は容易なものではない. ポストゲノムの最重要課題は, この糖鎖機能の解明である. 本ミニレビューでは, ショウジョウバエを用いた糖鎖生物学の現状とハエRNA interference(RNAi)ノックダウン体による糖鎖基本機能の網羅的解析への可能性を論じる.
ISSN:0031-9082