停留精巣Next 10 Years - 遊走精巣, 上昇精巣をどうするか

「抄録」: 上昇(挙上)精巣(ascending testis)とは, 一旦は陰嚢内に下降していた精巣が, 遊走(移動, 移動性)精巣(retractile testis)を経て, やがて陰嚢内に降りなくなる状態である. 現在の国内外の診療ガイドラインでは, 遊走精巣は経過観察が, 上昇精巣については診断時に精巣固定術を行うことが推奨されているが, その診断に明確な基準がないため手術の判断に難渋することがある. 停留精巣(acquired cryptorchidism)に対する手術推奨年齢が早まったにも関わらず, なおも年長児で手術が行われていることが判明し, 1990年代になりその要因として...

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Published in西日本泌尿器科 Vol. 85; no. 5; pp. 247 - 251
Main Author 井手迫俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本泌尿器科学会 01.06.2023
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ISSN0029-0726

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Summary:「抄録」: 上昇(挙上)精巣(ascending testis)とは, 一旦は陰嚢内に下降していた精巣が, 遊走(移動, 移動性)精巣(retractile testis)を経て, やがて陰嚢内に降りなくなる状態である. 現在の国内外の診療ガイドラインでは, 遊走精巣は経過観察が, 上昇精巣については診断時に精巣固定術を行うことが推奨されているが, その診断に明確な基準がないため手術の判断に難渋することがある. 停留精巣(acquired cryptorchidism)に対する手術推奨年齢が早まったにも関わらず, なおも年長児で手術が行われていることが判明し, 1990年代になりその要因として上昇精巣が認識されるようになった. 2000年以降になってその頻度や自然史が徐々に明らかになり, それに伴い, 遊走精巣, 上昇精巣における精巣障害性の報告も散見されている. また, 近年では上昇精巣において高率に停留精巣と類似した解剖学的異常を伴うことも報告されており, 先天的な病態である可能性も示唆されている. 遊走精巣の経過観察に際しては, 経過次第では精巣の障害をきたし得る病態であることを十分に認識しておくべきである.
ISSN:0029-0726