メダカの性的可塑性と環境中での内分泌かく乱現象の評価

はじめに 内分泌かく乱現象は, もともと野生生物に認められたさまざまな異常現象に端を発している. 魚類に認められた精巣卵, は虫類や鳥類, 軟体動物の外部生殖器や生殖にかかわる異常な諸現象や, 精子数の減少をはじめとするヒトにかかわる問題などの原因として, 環境中に放出された弱いホルモン活性を有する化学物質との関連が議論され, そこから, 化学物質一般の微弱なホルモン活性を検定する問題に発展したものである. 筆者はメダカを研究対象として生殖細胞の形成と性分化の研究に携わってきた. メダカでは20世紀前半から性に関するさまざまな知見が得られており, その中には性決定様式, 受精機構, 精巣卵形成...

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Published inJournal of Pesticide Science Vol. 31; no. 4; pp. 457 - 460
Main Author 濱口 哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農薬学会 2006
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ISSN1348-589X

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Summary:はじめに 内分泌かく乱現象は, もともと野生生物に認められたさまざまな異常現象に端を発している. 魚類に認められた精巣卵, は虫類や鳥類, 軟体動物の外部生殖器や生殖にかかわる異常な諸現象や, 精子数の減少をはじめとするヒトにかかわる問題などの原因として, 環境中に放出された弱いホルモン活性を有する化学物質との関連が議論され, そこから, 化学物質一般の微弱なホルモン活性を検定する問題に発展したものである. 筆者はメダカを研究対象として生殖細胞の形成と性分化の研究に携わってきた. メダカでは20世紀前半から性に関するさまざまな知見が得られており, その中には性決定様式, 受精機構, 精巣卵形成(生殖細胞の性分化制御機構), ホルモン投与による性転換などの研究が含まれている. また, 安価で多数個体を維持管理できること, また内温性動物であるほ乳類とは異なり, 体温が環境温度に依存して変化する外温性動物であることなどの理由から, メダカを用いた(環境)毒性学的研究も1970年代より行われてきており, 内分泌かく乱物質の生物検定用実験動物としても, その手法開発が積極的に進められてきたことはご承知のとおりである.
ISSN:1348-589X