抵抗性誘導型殺菌剤チアジニルの開発

「はじめに」チアジニル(1, Fig. 1)は, 日本農薬(株)が開発した抵抗性誘導型の新規殺菌剤である. 化学構造的には, 1,2,3-チアジアゾール-5-カルボン酸アニリドであり, ヘテロ環部分に特徴がある. チアジニルは育苗箱施用剤として, 移植当日処理後80日以上の長期にわたり安定した効果持続性を示すとともに, 本田水面施用剤として, 処理直後からの速効性および効果持続性に優れる. また本剤の作用機構は抵抗性誘導であることから, 薬剤に対する耐性発達のリスクが低いと考えられる1). さらに, イネいもち病だけでなく, イネ白葉枯病やもみ枯細菌病等の細菌病にも有効であり, 防除の効率化に...

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Published inJournal of Pesticide Science Vol. 31; no. 2; pp. 174 - 181
Main Authors 津幡健治, 黒田潔, 山本好伸, 八十川伯朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農薬学会 2006
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ISSN1348-589X

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Summary:「はじめに」チアジニル(1, Fig. 1)は, 日本農薬(株)が開発した抵抗性誘導型の新規殺菌剤である. 化学構造的には, 1,2,3-チアジアゾール-5-カルボン酸アニリドであり, ヘテロ環部分に特徴がある. チアジニルは育苗箱施用剤として, 移植当日処理後80日以上の長期にわたり安定した効果持続性を示すとともに, 本田水面施用剤として, 処理直後からの速効性および効果持続性に優れる. また本剤の作用機構は抵抗性誘導であることから, 薬剤に対する耐性発達のリスクが低いと考えられる1). さらに, イネいもち病だけでなく, イネ白葉枯病やもみ枯細菌病等の細菌病にも有効であり, 防除の効率化に貢献できるものと考えられる. 日本では2003年4月に登録を取得し(商品名ブイゲット(R)), 育苗箱施用分野ではブイゲット箱粒剤の他, 殺虫剤, 殺菌剤との混合剤6種を, 本田水面施用分野では, ブイゲット粒剤の他, 除草剤との混合剤を登録, 販売している. さらに日本国内だけでなく, 韓国でも2003年に登録を取得し, 販売を開始している2). 本稿では, チアジニル創製の研究経緯, 合成, 構造活性相関, 生物活性, 安全性, 代謝, 分解, 作用機構等について述べる.
ISSN:1348-589X