1. 肝転移をきたした直腸LST(laterally spreading tumor)の1例

【症例】 75歳, 男性. 平成21年3月頃より下肢の浮腫が出現したため近医を受診したところ, 腫瘍マーカー高値(CEA 11.11, CA19-9 711)を指摘された. 精査目的に当科紹介され, 腹部USにて肝S8に2cmのhypoechoic massを認めた. CTでは同部位の腫瘤は造影されにくく, 転移性肝癌を疑われた. さらに直腸Rbに2cm程度の隆起性病変もCTで指摘された. FDG-PETでは肝S8に異常集積を認めたが, 直腸をはじめ他臓器に集積を認めなかった. 肝生検の結果はmetastatic adenocarcinomaであった. 一方, 大腸内視鏡検査を行ったところ,...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 60; no. 3; p. 287
Main Authors 工藤智洋, 星野崇, 乾正幸, 長沼篤, 高木均, 大木孝, 高他大輔, 坂元一郎, 山田達也, 中村正治, 小川晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.08.2010
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ISSN1343-2826

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Summary:【症例】 75歳, 男性. 平成21年3月頃より下肢の浮腫が出現したため近医を受診したところ, 腫瘍マーカー高値(CEA 11.11, CA19-9 711)を指摘された. 精査目的に当科紹介され, 腹部USにて肝S8に2cmのhypoechoic massを認めた. CTでは同部位の腫瘤は造影されにくく, 転移性肝癌を疑われた. さらに直腸Rbに2cm程度の隆起性病変もCTで指摘された. FDG-PETでは肝S8に異常集積を認めたが, 直腸をはじめ他臓器に集積を認めなかった. 肝生検の結果はmetastatic adenocarcinomaであった. 一方, 大腸内視鏡検査を行ったところ, 直腸Rbに顆粒型結節混在型側方発育型腫瘍, いわゆるLST-G, mixed typeを認めた. 色素撒布, NBIおよび拡大観察の結果, VI+IIILl型pit patternと判定した. 内視鏡的には粘膜内癌と診断したが, 他に肝転移をきたす病変を指摘できなかったため, 一括切除による診断も兼ねて直腸LSTに対して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した. 病変は19×15×9mm, 病理診断はpapillary adenocarcinoma, infα, sm<1000μm, ly1, v1であった. 脈管浸潤があるため追加切除を行ったところ, LN#251周囲にtumor emboliを認め, 最終診断はSM, N1H1P0M0であった. 【考察】 LSTは腫瘍径の割に担癌率が低く, 内視鏡治療の適応となることが多い. しかしLSTには亜分類が存在し, 各亜分類間でsm癌率が異なる. 今回我々が経験したLSTは顆粒型(-G)に分類され, さらに結節混在型(mixed type)に分類されるが, この場合, 腫瘍径の増大とともに担癌率およびsm癌率が上昇する. 内視鏡診断においてpit pattern診断の正診率は非常に高いが, 腫瘍径の大きいLST, 特に隆起を有する結節混在型に対する正診率は低下することが予想され, 今後内視鏡診断をするうえで注意が必要と思われた. また, sm<1000μmにもかかわらずリンパ節転移を認めた理由について, もともと粘膜筋板同定不能例として扱うべきものを, 粘膜筋板を推測して深達度を測定してしまったことによるものかもしれない. あらためて大腸SM癌の浸潤実測値測定法について, 理解を深める必要があると思われた.
ISSN:1343-2826