20. 整容性にこだわる再発乳がん患者の意思決定への関わり
【はじめに】治療選択を自ら意思決定することにより, 治療に伴うさまざまな変化に対応し, 自らの生きる力となりうる1)といわれている. 今回, 生命の危機よりも整容性にこだわり, 精神的動揺が見られた患者の治療意思決定に関わったので報告する. 【事例】40歳代女性, 乳がん, 肺・胸膜転移, 皮膚再発. 術後補助化学療法と内分泌療法実施後, 乳房再建後, 皮膚再発と胸膜・肺転移により化学療法, 内分泌療法, 放射線療法, 化学療法の治療経過をたどる. 肺転移, 皮膚再発病巣の悪化が見られる中で, 再発5回目の治療変更にナベルビン投与が選択された. 医師は, 生命の危機を重視して治療を継続したが,...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 61; no. 1; p. 91 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.02.2011
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ISSN | 1343-2826 |
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Summary: | 【はじめに】治療選択を自ら意思決定することにより, 治療に伴うさまざまな変化に対応し, 自らの生きる力となりうる1)といわれている. 今回, 生命の危機よりも整容性にこだわり, 精神的動揺が見られた患者の治療意思決定に関わったので報告する. 【事例】40歳代女性, 乳がん, 肺・胸膜転移, 皮膚再発. 術後補助化学療法と内分泌療法実施後, 乳房再建後, 皮膚再発と胸膜・肺転移により化学療法, 内分泌療法, 放射線療法, 化学療法の治療経過をたどる. 肺転移, 皮膚再発病巣の悪化が見られる中で, 再発5回目の治療変更にナベルビン投与が選択された. 医師は, 生命の危機を重視して治療を継続したが, 患者は, 目標とする整容性が保てない治療効果や医師が生命の危機を重視して治療選択することに納得できず, 精神的動揺が見られていた. 【結果】患者が望み, 病院を受診する日は必ず20分以上面談した. 患者は, 面談時に泣きながら整容性が保てない苦痛や医師との治療目標に差が生じている不満など話した. また, 過去に整容性を重視して意思決定した治療を後悔していないことや生命の危機よりも整容性を重視した治療を望むことを強調した. このことから, 患者の意思決定における治療選択表明や自分自身の状況, 将来起こりうる結果に関する重要性を認識する能力はあると判断し, 可能な治療方法が限られていることや治療効果, 副作用など十分な情報提供を行った. また, 患者の辛い思いや整容性にこだわる価値観を共感し, その思いを医師に伝え, 治療方法について再度, 十分話し合えるように調整した. 患者は, 他の治療方法を選択しても自分の目標とする効果が得られるか不確実であることを認識し, 現在の治療方法継続の意思決定を行った. 看護師は, 患者の思いを相談できる関係を築き, 患者の意思決定能力をアセスメントし, 情報提供や医師との調整など行いながら患者が意思決定できるように支援することが大切である. 【今後予測される問題】患者は再発乳がんであるため, 今後, 患者の望む整容性を維持することも困難となることが予測される. このことは患者にとって大きなストレスとなり, 危機状態に陥る可能性も高い. |
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ISSN: | 1343-2826 |