エトキシキンおよび酢酸レチニールによるラット腎乳頭壊死および石灰化の増強要因

「はじめに」毒性試験において腎乳頭部の石灰化はしばしばみられる病変であるが, その発生要因については不明な点も多い. 腎における石灰化病変は, 皮髄境界の間質にみられるもの, 尿細管壊死後に特に皮質にみられるもの, 髄質乳頭部にみられるものに分けることができ, 発生機序もそれぞれ異なることが明らかにされている. 皮髄境界型では食餌中のカルシウムとリンの比率が重要であることが指摘されており, 単に高カルシウム状態が腎の石灰化を促進する条件ではないとされている1. 腎乳頭部にみられるものでは, 先行する乳頭壊死が重要であり, 石灰化は二次的な病変であると考えられているが2, その促進要因については...

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Published inJournal of Toxicologic Pathology Vol. 1; no. 2; pp. 185 - 191
Main Authors 下地尚史, 長谷川良平, 古川文夫, 豊田和弘, 今沢孝喜, 佐藤秀隆, 高橋道人, 林裕造
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本毒性病理学会 1988
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Summary:「はじめに」毒性試験において腎乳頭部の石灰化はしばしばみられる病変であるが, その発生要因については不明な点も多い. 腎における石灰化病変は, 皮髄境界の間質にみられるもの, 尿細管壊死後に特に皮質にみられるもの, 髄質乳頭部にみられるものに分けることができ, 発生機序もそれぞれ異なることが明らかにされている. 皮髄境界型では食餌中のカルシウムとリンの比率が重要であることが指摘されており, 単に高カルシウム状態が腎の石灰化を促進する条件ではないとされている1. 腎乳頭部にみられるものでは, 先行する乳頭壊死が重要であり, 石灰化は二次的な病変であると考えられているが2, その促進要因についてはあまり知られていない. また乳頭壊死を引き起こす化学物質として非ステロイド系の解熱鎮痛剤が有名であり, これらを用いた研究では乳頭壊死の発現機序として腎の循環障害が重視されている3. 我々は, ラットを用いた二つの発癌実験系において2種類の化学物質の投与により, 腎乳頭の壊死および石灰化病変の発生が促進されることを認めたので報告するとともに, 文献的考察を加えた.
ISSN:0914-9198
1881-915X