11. 食道癌ESD治療の経験

【目的】食道癌は自覚症状を伴った進行癌で発見されることが多く, これらに対し外科的手術を中心として, 放射線療法や化学療法が行われていた. 近年, 検診の普及や特殊光などの内視鏡診断機器の開発がすすみ, 比較的早期に発見される症例が増加してきている. これら早期癌に対して, 従来は内視鏡的粘膜切除術(EMR)が中心で行なわれてきていたが, 手技の向上や処置器具の改良により, 現在は一括切除可能な内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が広まりつつある. そこで, 今回当科で経験した食道癌に対してESDを施行した症例をretrospectiveに検討することとした. 【対象と方法】対象は2004年から2...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 59; no. 2; p. 196
Main Authors 田中成岳, 加藤広行, 酒井真, 佐野彰彦, 猪瀬崇徳, 家田敬輔, 宗田真, 中島政信, 深井康幸, 宮崎達也, 増田典弘, 福地稔, 尾嶋仁, 桑野博行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2009
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ISSN1343-2826

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Summary:【目的】食道癌は自覚症状を伴った進行癌で発見されることが多く, これらに対し外科的手術を中心として, 放射線療法や化学療法が行われていた. 近年, 検診の普及や特殊光などの内視鏡診断機器の開発がすすみ, 比較的早期に発見される症例が増加してきている. これら早期癌に対して, 従来は内視鏡的粘膜切除術(EMR)が中心で行なわれてきていたが, 手技の向上や処置器具の改良により, 現在は一括切除可能な内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が広まりつつある. そこで, 今回当科で経験した食道癌に対してESDを施行した症例をretrospectiveに検討することとした. 【対象と方法】対象は2004年から2008年までに当科でESDを行なった食道癌患者21名, 23病変. 性別は男性20名, 女性1名. 平均年齢66.8歳(41-81歳). 癌占拠部位はCe:2例, Ut:4例, Mt:11例, Lt:5例, Ae:1例であった, 肉眼型は0-I型:1例, 0-IIa型:4例, 0-IIb型:11例, 0-IIc型:7例であり, 病変の大きさは長径平均31.7mm(3-90mm, 中央値28mm), 短径平均16.0mm(4-40mm, 中央値12mm)であった. ESDは初期の3例に対しては内視鏡室において鎮静剤を用い, 心電図モニターとパルスオキシメータによるモニタリングをしながら施行した. その後は事前に麻酔科受診を行い, 手術室にて麻酔科医による全身麻酔管理下に施行した. 手技に関して, 粘膜挙上は当初グリセリンを用いていたが, ここ最近の7症例ではムコアップを使用している. また, 切開剥離はHook knife(R)とIT knife eq(R)を用いていたが最近の7症例では主にFlush knife eq(R)を用いて施行している. 【結果】23症例中19症例で一括切除が可能であった(82.6%). また, 23例中3例で粘膜挙上が不完全であり, ESD試行後のAPCによる焼灼と術後に放射線療法の追加治療を行った. 手術手技時間は平均で180.9min(85-420min, 中央値112mm), 出血はほとんど認めなかった. 合併症は全症例中4例に認め, その内訳は縦隔気腫が3例, 胸水貯留と筋層損傷が各々1例ずつであったが, 切開剥離にFlush knife(R)を用いた最近の症例では合併症を認めなかった. また, 縦隔炎などの重篤な合併症は認めず, 術後入院期間は平均8日(2-15日)であった. 病理学的検索では, 相対適応に入る深達度m3およびsm1症例を4例に認め, 脈管侵襲に関してはly(+)症例を1例, ly(+)V(+)症例を1例認めた. なお, 局所病変の評価においては, 現在のところ再発を認めていない. 【結語】早期食道癌に対するESDは比較的侵襲が低く, 根治性も得られる治療法と考えられる. 今後, 壁深達度など治療前の診断精度の向上に心がけ, 更なる症例の蓄積を行っていきたいと考える.
ISSN:1343-2826