残留農薬のリスクの評価・管理・コミュニケーション

1. 残留農薬の評価体制と食品安全委員会の設立 木下光明(395) 2. 農薬取締法の改正と農薬の適正使用の遵守 横田敏恭(395) 3. JAグループにおける安全な農産物作りの取組み 宗和弘(396) 4. 消費者の立場からの農薬問題とリスクコミュニケーション魚崎辰彦(397) 5. 食品からの残留農薬摂取の実態 斎藤勲(398)オーガナイザー:石井康雄(独立行政法人農業環境技術研究所)清水克彦(兵庫県立農林水産技術総合センター)山本広基(島根大学)星野敏明(日本バイエルクロップサイエンス)執筆者:斎藤勲(愛知県衛生研究所)* 本学会の第27回大会でも「化学物質の健康と環境に及ぼすリスク評価...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJournal of Pesticide Science Vol. 29; no. 4; p. 394
Main Author 斎藤勲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農薬学会 2004
Online AccessGet full text
ISSN1348-589X

Cover

More Information
Summary:1. 残留農薬の評価体制と食品安全委員会の設立 木下光明(395) 2. 農薬取締法の改正と農薬の適正使用の遵守 横田敏恭(395) 3. JAグループにおける安全な農産物作りの取組み 宗和弘(396) 4. 消費者の立場からの農薬問題とリスクコミュニケーション魚崎辰彦(397) 5. 食品からの残留農薬摂取の実態 斎藤勲(398)オーガナイザー:石井康雄(独立行政法人農業環境技術研究所)清水克彦(兵庫県立農林水産技術総合センター)山本広基(島根大学)星野敏明(日本バイエルクロップサイエンス)執筆者:斎藤勲(愛知県衛生研究所)* 本学会の第27回大会でも「化学物質の健康と環境に及ぼすリスク評価と管理」というテーマでシンポジウムが開催された. しかしその後, 無登録農薬の販売, 使用の発覚, 輸入冷凍ほうれん草からの違反農薬の検出など食品中残留農薬問題が発生し, 従来からのBSE問題, 食品偽装事件等に加えて食の安全, 安心に関する消費者の不安を増大させた. これらの状況を解決するために, 国は国民の健康の保護を基本的認識とした「食品安全基本法」の制定を行い, 農林水産省は無登録農薬の使用禁止, 使用基準の遵守を謳った農薬取締法の改正, 厚生労働省は農薬等ポジティブリスト制を盛り込んだ食品衛生法の改正を行った. 具体的には, 内閣府に食品安全委員会を設け, 食品摂取により人の健康に及ぼす影響を科学的に評価し(リスク評価), それに基づいて基準の設定, 規制の実施など行政的対応(リスク管理)を厚生労働省, 農林水産省が実施, 様々な問題に対する祉会的合意形成(リスクコミュニケーション)として関係者相互間(一方通行ではない)の情報および意見の交換の場が持たれ, 従来の生産者優先, 消費者保護軽視と取られていた行政対応の大幅な変更が求められることとなった. 昭和50年(1975年)日本農薬学会は, 作物保護や農薬をめぐる諸問題を考える学問, 技術の発展, 即ち農薬科学の発展を通じて人類の福祉に貢献し, 人口増加, 地球環境などの人類の諸問題の解決に寄与することを目的として設立された. しかし, その内容は農薬としての新規化合物の開発, 作用機作, 土壌, 動植物体内動態, 植物防除, 昆虫防除のための研究が主であり, 農薬の副次的側面である残留モニタリングやそれを支える分析技術の発展, 人への生態影響評価などは残念ながら積極的に取組まれた訳ではない. しかし, 近年社会環境の中での残留農薬問題の発生により, 農薬が食の安全, 安心の問題の中で不安を感じる代表的な物質となっているが, 一面では農薬そのものが不当に評価されている面も否めない. こういった背景の下, 日本農薬学会としても, 従来からの啓蒙活動(全国各地での農薬問題を考えるシンポジウムなど)を更に拡大し, 日本農薬学会の下部組織である農薬残留分析研究会およびレギュラトリーサイエンス研究会が中心となって, 大会でのシンポジウムの開催, 残留分析の研修会として農薬残留分析セミナー(昨年度は全国5ヶ所で開催)などを開催している. 残留農薬問題への不安が, 消費者の中で食生活そのもののバランスを崩す危うさがある. それを避けるためにも, 農薬問題に携わるものとして食品中残留農薬問題を中心に多くの方々が議論し, この問題の全体的な状況を正しく把握し, その上で個別的問題に的確かつ冷静に対応することが求められている. 農薬は他の環境汚染物質と異なり, 豊富な科学的情報に裏打ちされており, リスクコミュニケーションに最も適した化合物と思っている. 今回の「残留農薬のリスクの評価, 管理, コミュニケーション」の各演者のそれぞれの専門分野からの話題提供をふまえ, 農薬のもつ本来の有用性が発揮でき許容される社会環境を皆で構築する一助になることを期待し, 各演者の発表内容の概要を報告する.
ISSN:1348-589X