心筋梗塞後心室瘤に広範な石灰化を伴った4例の臨床像

我々は心筋梗塞後心室瘤に高度な石灰沈着を認めた稀な4症例を経験した. 年齢は55~71歳, 平均64.0歳で, 全例男性であった. 心筋梗塞発症時年齢は41~57歳, 平均49.3歳であり, 4例とも前壁中隔あるいは広範囲前壁梗塞であった. 冠危険因子は喫煙のみが2例, 全くないものが2例であった. 発作性心房細動を反復して起こした1例を除いて, 梗塞後は特別な合併症もなく経過していたが, 10~22年, 平均14.5年後に重大な心事故を発生した. 心室頻拍は4例全例に認め, その発生機序としては, 体表面加算平均心電図を記録した2症例でともに心室遅延電位を検出したため, reentry によ...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 29; no. 7-8; pp. 565 - 573
Main Authors 児玉, 光司, 城, 忠文, 藤原, 康史, 丸本, 和正, 川田, 浩之, 松原, 渉, 濱田, 範子, 野本, 良一, 古谷, 敬三, 仁志川, 高雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.08.1992
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Summary:我々は心筋梗塞後心室瘤に高度な石灰沈着を認めた稀な4症例を経験した. 年齢は55~71歳, 平均64.0歳で, 全例男性であった. 心筋梗塞発症時年齢は41~57歳, 平均49.3歳であり, 4例とも前壁中隔あるいは広範囲前壁梗塞であった. 冠危険因子は喫煙のみが2例, 全くないものが2例であった. 発作性心房細動を反復して起こした1例を除いて, 梗塞後は特別な合併症もなく経過していたが, 10~22年, 平均14.5年後に重大な心事故を発生した. 心室頻拍は4例全例に認め, その発生機序としては, 体表面加算平均心電図を記録した2症例でともに心室遅延電位を検出したため, reentry によるものが強く疑われた. また, うっ血性心不全, 血栓塞栓症はそれぞれ2例, 1例に認めたが, 狭心症を合併したものはなかった. 4例の左室拡張末期圧は11~22mmHgと上昇し, 左室造影より求めた同容積は143~503ml/m2と増加していた. また, 駆出率は11~24%と著明に低下していたが, 心不全を認めなかった2例は, 心係数はそれぞれ4.01, 3.19l/min/m2と正常に保たれていた. 心不全を合併した2例はそれぞれ2.32, 1.56l/min/m2であった. さらに, 冠動脈造影上, 左前下行枝は全例で完全閉塞しており, 2例が左前下行枝のみの1枝病変であった. 他の2例は右冠動脈にも有意な硬化性病変を有していた. 1例は薬剤抵抗性の心室頻拍のために緊急で心室瘤切除術が行われたが, 術後は心室頻拍は消失し, 6年たった現在も生存中である. 1例は退院後, 軽労作中に突然死し, 別の1例はショックを伴った心室頻拍の約10日後に肺炎を併発して死亡した. さらに残りの1例は肺炎に続発した敗血症性ショックのために死亡した.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.29.565