療養型病床での情報共有と生活支援への取り組み

【はじめに】 当院は療養型病床を有し,長期入院される方が多いが,入院生活に「ハリ」を保つことは難しい.また,長期入院によって対象者の現状や方向性を再確認・検討する機会も少ない.そのため,当院では「新たな能力の発見・QOLの改善」を目的として作品展を開催している.さらに,スタッフと情報共有が行えるようカンファレンスシート(連絡帳)を活用している.その結果,長期入院していた症例が施設へ退院が可能となったので,取り組みの概要と経過を加えて報告する.尚,対象者には同意を得ている.【症例紹介】 年齢:80代.診断名:脳梗塞,左片麻痺.職業:造船所の職人.現病歴:3年前に脳梗塞を発症.誤嚥・呼吸困難を繰り...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 191
Main Authors 大曽 史朗, 磯 直樹, 有村 友里, 内村 ふみ子, 田中 浩二, 佐賀里 昭, 田平 隆行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.191.0

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Summary:【はじめに】 当院は療養型病床を有し,長期入院される方が多いが,入院生活に「ハリ」を保つことは難しい.また,長期入院によって対象者の現状や方向性を再確認・検討する機会も少ない.そのため,当院では「新たな能力の発見・QOLの改善」を目的として作品展を開催している.さらに,スタッフと情報共有が行えるようカンファレンスシート(連絡帳)を活用している.その結果,長期入院していた症例が施設へ退院が可能となったので,取り組みの概要と経過を加えて報告する.尚,対象者には同意を得ている.【症例紹介】 年齢:80代.診断名:脳梗塞,左片麻痺.職業:造船所の職人.現病歴:3年前に脳梗塞を発症.誤嚥・呼吸困難を繰り返し,気管挿管施行.その後,胃瘻増設し,発症より6か月後に当院転院となる.【経過I】 当初より,機能訓練には意欲を示すが,それ以外は依存傾向でADLもほぼ全介助であった.食事も昼食以外は胃ろうでの補給で,ADL介入へは拒否的で,自主的な活動は見られなかった.入院より4ヶ月経過し,座位時間が延長したことに合わせて折り紙等の作業を徐々に導入した.作業を行う中で,様々なことが遂行可能なことを理解し,勧めに応じることが多くなった.また,他者の作品を称賛する等,周囲との交流も見られるようになった.10ヶ月を経過し,作品展へ出展をお願いすると,迷いながらも承諾され,作品展へ参加することとなった.【作品展について】 廊下のスペースを利用し2ヶ月に1回の頻度で開催し,入院患者様が作品を持ち寄り,題名と解説,作者の紹介も含めて掲示している.展示数は約30点で,作品は写真,折り紙細工など様々である.展示スペースは,院内レストラン付近にあり,一般の方を含め,患者様も閲覧できる.【経過II・結果】 出展を機に作業時間が増え,家族やスタッフとも作品展の話題で交流し,称賛されることで自信にも繋がった.また,離床時間も大幅に増加し,入院より18カ月で起居・移乗が軽介助で可能となった.この時期より,看護師の要望も増え,カンファレンスシート(連絡帳)を利用し,日々の情報交換・共有を促した.そして,病棟での車椅子移動や,電動ベッド等の操作も可能となり,自律した生活を獲得し,施設への退院が可能となった.【考察】 作品展を1つの転帰として症例が自信・意欲を得て,ADLの改善へも大きな影響を及ぼした.さらに,普段は見られない場面を設定することで,スタッフ・家族へも情報を提供する機会となり,対象者の能力を再認識するに至ったと考えられる.また,カンファレンスシートを活用し,僅かな変化であっても情報共有を行うことで,状況に合わせた援助が可能であったと考える.今後も,活動を継続し維持期においても対象者の変化に対応した適切な支援を行っていきたい.
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.191.0