簡易上肢機能検査による客観的評価がもたらす効果についての考察
【はじめに】 独居にて長期間住んでいた地域から娘の居住地にある当院に転院し、自宅復帰のためのリハビリをおこなった症例を担当した。作業療法実施による訓練効果を、簡易上肢機能検査(以下STEF)を使用することで得点として数値的な認識に導いた。回復状況の客観的な理解が、症例と家族の外出に対する取り組みに変化をもたらし、自宅退院への要因となったので報告する。【症例】 67歳女性。左視床出血により右片麻痺を呈す。住居地近辺での急性期治療終了後、リハビリ継続のため転院。Br.stage上肢4~5、手指4~5、下肢5。右肩関節・手関節運動時に痛みを伴う可動域制限。麻痺側中等度感覚鈍麻。退院後は病前と同様に前...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 135 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2007.0.135.0 |
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Summary: | 【はじめに】 独居にて長期間住んでいた地域から娘の居住地にある当院に転院し、自宅復帰のためのリハビリをおこなった症例を担当した。作業療法実施による訓練効果を、簡易上肢機能検査(以下STEF)を使用することで得点として数値的な認識に導いた。回復状況の客観的な理解が、症例と家族の外出に対する取り組みに変化をもたらし、自宅退院への要因となったので報告する。【症例】 67歳女性。左視床出血により右片麻痺を呈す。住居地近辺での急性期治療終了後、リハビリ継続のため転院。Br.stage上肢4~5、手指4~5、下肢5。右肩関節・手関節運動時に痛みを伴う可動域制限。麻痺側中等度感覚鈍麻。退院後は病前と同様に前住居地にて独居希望。【治療経過】 入院当初食事は左手にてスプーン使用。排泄は洋式トイレでは下衣脱着介助。右上肢の使用なくADL全般に介助を要する。作業療法では手摺り把持や物品の固定といった右上肢の補助手としての使用を誘導するも受け入れ不十分。この時期の一時外泊では常に介助を必要とした。初回外泊直後のSTEF右21/100左89/100。症例は自宅退院の困難さを痛感し、消極的であった自主練習の再指導を希望。机上での両手動作訓練を積極的に開始する。同時に作業療法では食事・排泄訓練を行う。1ヵ月後STEF右55左96。このころの外出時には毎回課題を設定し、娘にも注目すべき点を明確に指導することで問題点の共通認識を促す。家庭内ADL自立に伴い、OT訓練を家事動作主体に変更。2ヵ月後のSTEF右68左99。この時期の外出時では行う家事動作を決め、その遂行状況を症例と娘よりの報告を受け作業療法訓練に反映させた。退院時Br-stage4~5‐5‐5。STEF右75左100。右肩・手関節の運動制限は残存。ADL全自立。【結果】 退院直前のSTEFにおいて、右肩と手関節の痛み増悪による所要時間の延長が見られる項目もあったが、概ね差の指標が得られる時間短縮を図ることが出来た。退院時には食事は右手にて箸可能。炊事・洗濯自立となった。退院後は娘宅にて1ヵ月間の生活後、浴室改修後独居での生活を再開する。【考察】 症例は麻痺による機能低下を漠然と気にするあまり、ADLでの積極的な右上肢の活動はみられなかった。そこでSTEFによる機能を点数化し、症例に回復過程を数的に提示することで冷静に障害と向き合うことができた。独居に対し不安視する娘にも機能回復を客観的に説明することで、不安を取り除く要因となった。作業療法では外出時の問題点の抽出や退院後の生活イメージをOT・症例・家族間の共有し、身体機能の適切な能力発揮できるように心がけた。このことが、退院後の独居生活へつながったと考える。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2007.0.135.0 |