片側人工膝関節全置換術後の体幹及び骨盤の側方傾斜角度について

【目的】  骨盤や体幹の過剰な側方傾斜は,変形性膝関節症患者の歩行立脚期における特徴の一つであり,膝関節に及ぼす負担を軽減させるための代償動作であることが報告されている.今回我々は,片側の人工膝関節全置換術(以下,TKA)実施患者の術側と非術側立脚期における体幹及び骨盤傾斜角度を比較することにより,膝関節のアライメント改善が体幹及び骨盤傾斜に及ぼす影響について検討することを目的とした. 【方法】  対象は,片側のTKAを行なった3名(平均年齢66.7±2.1歳,男性1名・女性2名,手術実施からの期間8.7±5.3ヶ月)とした.非術側膝関節は,2例がKellgren-Lawrence分類IIで無...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 118
Main Authors 田辺 理恵, 櫻井 愛子, 原籐 健吾, 四宮 美穂, 野中 綾乃, 福井 康之, 大谷 俊郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.118.0

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Summary:【目的】  骨盤や体幹の過剰な側方傾斜は,変形性膝関節症患者の歩行立脚期における特徴の一つであり,膝関節に及ぼす負担を軽減させるための代償動作であることが報告されている.今回我々は,片側の人工膝関節全置換術(以下,TKA)実施患者の術側と非術側立脚期における体幹及び骨盤傾斜角度を比較することにより,膝関節のアライメント改善が体幹及び骨盤傾斜に及ぼす影響について検討することを目的とした. 【方法】  対象は,片側のTKAを行なった3名(平均年齢66.7±2.1歳,男性1名・女性2名,手術実施からの期間8.7±5.3ヶ月)とした.非術側膝関節は,2例がKellgren-Lawrence分類IIで無症状,1例がIVで荷重時痛を呈していた.  計測には三次元動作解析システムVICON MXを使用し,定常歩行における術側・非術側立脚期が各々3~5歩行周期分計測できるまで歩行を繰り返した.体幹と骨盤に貼付したマーカーから体幹及び骨盤の局所座標系を設定し,骨盤・体幹側方傾斜角度,骨盤と体幹の相対傾斜角度を算出した.各被験者の術側と非術側立脚期における骨盤および体幹傾斜角度,骨盤と体幹の相対角度のピーク値を求め,対応のないt検定により被験者内における術側と非術側の有意差の検定を行った.  尚,本研究は国際医療福祉大学三田病院の倫理審査の承認を得,全被験者に本研究の主旨を説明し同意を得て実施した. 【結果】  被験者3名の内,術側・非術側立脚期ともに立脚側へ体幹と骨盤が傾斜していた症例が1名,立脚側体幹は傾斜していたが,術側立脚期のみ立脚側へ骨盤が傾斜していた症例が1名,術側立脚期と非術側立脚期で傾斜方向が異なっていた症例が1名であり,各被験者において異なる傾斜パターンを示した.  術側と非術側の比較では,被験者3名の内2名において体幹側方傾斜角度は術側立脚期で有意に減少した(P<0.01).また被験者3名の内1名は体幹傾斜角度に有意差は認められなかった. 【考察】  体幹傾斜角度が術側立脚期で減少した2名の内,1名は骨盤傾斜角度が術側立脚期でも減少していたため,非術側と比較し術側立脚期の過度な体幹及び骨盤側方傾斜は改善したと考えられる.一方,体幹傾斜角度に有意差が認められなかった1名については,術後経過期間が短かった為体幹側方傾斜の動揺が大きく不規則な歩行パターンとなったことが考えられる.本研究から,膝アライメントの改善による術側の骨盤及び体幹側方傾斜角度のパターンは被験者で異なるため,体幹だけでなく骨盤や股関節との相対的な動きを考慮し理学療法をすすめていく必要があることが示唆された.
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.118.0