在宅死をサポートするための訪問看護師の役割
〈はじめに〉在宅医療の進歩に伴い終末期の在宅療養や在 宅死が可能となってきた。しかし,在宅死を希望する本人 の自己決定と家族の思いにずれが生ずることがあり,自己 決定の実現を妨げる要因となっている。今回,療養者の自 己決定と家族の気持ちの揺れの中で,自己決定のサポート と家族調整を行い在宅死が実現できた事例を通し,訪問看 護師の役割について再認識できたので報告する。 〈研究方法〉訪問看護記録や療養者,家族との関わりの中 から看護の実際を抽出し,松村の「終末期の自己決定を支 える訪問看護」に沿って訪問看護師の役割について考察す る。 〈倫理的配慮〉家族へ研究の趣旨を説明し,個人情報の保 護を伝え...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 58; p. 66 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
2009
一般社団法人 日本農村医学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.58.0.66.0 |
Cover
Summary: | 〈はじめに〉在宅医療の進歩に伴い終末期の在宅療養や在
宅死が可能となってきた。しかし,在宅死を希望する本人
の自己決定と家族の思いにずれが生ずることがあり,自己
決定の実現を妨げる要因となっている。今回,療養者の自
己決定と家族の気持ちの揺れの中で,自己決定のサポート
と家族調整を行い在宅死が実現できた事例を通し,訪問看
護師の役割について再認識できたので報告する。
〈研究方法〉訪問看護記録や療養者,家族との関わりの中
から看護の実際を抽出し,松村の「終末期の自己決定を支
える訪問看護」に沿って訪問看護師の役割について考察す
る。
〈倫理的配慮〉家族へ研究の趣旨を説明し,個人情報の保
護を伝えた上で同意を得た。
〈事例紹介〉80代男性肺がん末期(告知済み)
〈結果及び考察〉療養者本人は「絶対に家で死にたい」と
強く在宅死を希望した。家族は一時,在宅での看取りを希
望したが,疼痛の増強や衰弱という病状の変化に不安が増
大し,入院へと気持ちが傾きかけた。家族の心情を考慮し
つつ,療養者の自己決定を支えるため,不安要因の抽出と
対応,家族調整を主に看護介入した。家族の不安として一
番大きかったのは,「痛がるのを見ていられない」ことで
あった。それに対しては主治医と連携し,疼痛緩和を行っ
た。家族調整に関しては,当初キーパーソンは長女である
ように思われたが,孫がキーパーソン的役割を担っている
ことに気付いた。そこで,孫を中心に看護介入を進めたと
ころ,家族の気持ちの揺れがなくなり,在宅での看取りが
実現できた。村松が提唱する訪問看護師の役割である,サ
ポート機能,自己決定を支持するアドボカシー機能,自己
決定を理解し支援できる人を探す査定機能,疼痛緩和の方
法や不安解消のための情報提供などの教育機能を駆使し,
家族の気持ちの揺れを調整しながら,エンパワーメントを
引き出すことができた結果であると考える。 |
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ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.58.0.66.0 |