大動脈四尖弁による無症候性大動脈弁逆流症の臨床経過

無症候の60歳代男性.健診で高血圧と心雑音を指摘され,2010年10月に当院を初診した.聴診で拡張期雑音を聴取し,経胸壁心エコー検査で中程度の大動脈弁逆流症と大動脈四尖弁を認め,精査目的で当科へ入院となった.入院時の左室駆出率は62%であった.経食道心エコー検査,心臓CT検査から2つのlarger cuspと2つのsmaller cuspから構成される大動脈四尖弁を認めた.自覚症状がなく,左室拡張末期径も60 mm以下であったことから経過観察の方針とし,高血圧に対する内服治療を開始し退院となった.初診から5年間の経過観察期間内で明らかな臨床症状は出現しなかった.降圧管理と利尿薬の内服により,経...

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Published inShinzo Vol. 49; no. 3; pp. 284 - 291
Main Authors 下岡 良典, 牧口 展子, 成田 浩二, 福澤 純, 鶴巻 文生, 菅原 寛之, 長谷部 直幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2017
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.284

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Summary:無症候の60歳代男性.健診で高血圧と心雑音を指摘され,2010年10月に当院を初診した.聴診で拡張期雑音を聴取し,経胸壁心エコー検査で中程度の大動脈弁逆流症と大動脈四尖弁を認め,精査目的で当科へ入院となった.入院時の左室駆出率は62%であった.経食道心エコー検査,心臓CT検査から2つのlarger cuspと2つのsmaller cuspから構成される大動脈四尖弁を認めた.自覚症状がなく,左室拡張末期径も60 mm以下であったことから経過観察の方針とし,高血圧に対する内服治療を開始し退院となった.初診から5年間の経過観察期間内で明らかな臨床症状は出現しなかった.降圧管理と利尿薬の内服により,経胸壁心エコー検査では大動脈弁逆流症の進行もみられず,左室拡張末期径,左室駆出率の増悪はみられなかった.また大動脈径や弁基部の拡大も認めなかった.大動脈四尖弁は稀な疾患であり,臨床経過についてはほとんど報告がない.これまでの報告から四尖弁に起因する大動脈弁逆流症は比較的早期に外科的修復を要することが多いとされる.われわれの経験した症例から無症候性の大動脈弁逆流症と診断された症例においては,早期に内科的管理を行うことで外科的修復を回避ないし延期することの可能性が示唆され,修復時期の延期は修復方法の選択肢を広げ得る可能性も期待できる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.284